2020年、コロナウイルスの流行時、その健康効果が謳われ、ちょっとした人気食材として今まで食べたことがない人にも普及したオートミール。オートミールは、食物繊維やミネラルなどを豊富に含み、ダイエット食のほか、離乳食、介護食などとしても利用が広がっているようです。
オートミールは、エン麦を圧ぺんや挽き割りなどをして加工や調理、食べやすくしたものです。原材料であるエン麦は、カナダやアメリカ、オーストラリアなどで生産、日本に輸入されていますが、これまでに報告をしてきた小麦の生産と同様、海外での生産現場で、収穫作業性の改善や乾燥具合のコントロールを狙った除草剤グリホサートによるプレハーベスト処理が行われていることが知られています。
アメリカ環境保護団体EWGの新しいレポートでも、プレハーベストの影響による検出を示した報告があります(EWGレポート)。では、日本で流通しているオートミールはどうなのでしょうか。
このレポートは、2021年、2023年に、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンさんとの共同調査として行ったデータと、分析センターの利用者さんから提供いただいた試料、分析センターの市場調査として購入したオートミール関連製品について調査をおこなった結果をまとめたものです。2~4年前とやや古いデータですが、これまで公開の機会がなかったことから、今回、改めてウェブページでご覧いただけるようにしました。
2021年6月に一般ユーザーさんから検査サンプルとして提供をいただいたもの1検体、2021年7月に遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンさんとの共同調査としていただいた3検体、2023年2月に農民連食品分析センターで入手した1検体の合計5検体について検査を実施しました。
原産国は、アメリカ2製品、オーストラリア2製品、フィンランド1製品となっています。栽培方法の区分としては、有機栽培のものが2製品でした。
検査は、以下の分析条件で実施しました。定量下限は0.005ppmです。(詳細をクリックで続きを表示)
グリホサートの残留検査は、高速液体クロマトグラフ質量分析計を利用した弊センター開発のグリホサート試験法で実施しました。検査対象成分は、グリホサートおよびその代謝物AMPA、グルホシネートとなっています。本試験によるグリホサートの定量限界は0.005 ppm、AMPAは定量限界は0.01 ppmです。
5製品を検査したところ、1件からグリホサートが検出されました。単位はppmです。
表1 オートミール製品のグリホサート調査2021,2023の結果
Glyphosate is registered for pre-harvest weed control. Do not use as a desiccant. To prevent unacceptable residues in the harvested grain, only apply pre-harvest glyphosate when grain moisture content is less than 30% in the least mature part of the field*.引用ここまで
Consult with your grain buyer before using this product on oats. Some grain buyers may not accept cereal crops treated with pre-harvest glyphosate. Strictly follow the product label guidelines to minimize scrutiny in the global marketplace.
*Secondary growth can impact grain moisture assessment.
グリホサートは収穫前の雑草防除用として登録があります。乾燥剤としては使用しないこと。収穫物に品質を落とす(補足:雑草由来の破片や異穀などの)残渣物の混入を防ぐためと、圃場の最も成熟していない場所の穀物の含水率が30%未満である場合にのみ使用を認めます。
オーツ麦でグリホサートを使用する際には、事前に穀物バイヤーに相談してください。いくつかのバイヤーはグリホサートによるプレハーベスト処理を行ったシリアルを容認しないことがあります。グローバル市場での影響を最小限にとどめるために製品ラベルのガイドラインに厳密に従いましょう。
*2次的な成長(補足:穂発芽?を指す?)は、穀物の水分評価に影響を与える可能性があります。
EWG:Roundup for Breakfast, Part 2: In New Tests, Weed Killer Found in All Kids’ Cereals Sampled
EWG:Going, going, gone? EWG finds glyphosate levels drop in oat-based products
共同調査:ベビーフードや子ども向けのおやつのグリホサート残留調査-2021-
輸入ワインのネオニコチノイド系農薬など残留農薬131成分調査2018 1st
モンサント社:グリホサートの有用性と安全性(リンク切れ / 代替リンクInternet Archive snapshot 2020.SEP.29,15:39:02)
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