[ショートレポート]オートミール製品のグリホサート調査2021および2023

top
2025.9.8公開

はじめに

 2020年、コロナウイルスの流行時、その健康効果が謳われ、ちょっとした人気食材として今まで食べたことがない人にも普及したオートミール。オートミールは、食物繊維やミネラルなどを豊富に含み、ダイエット食のほか、離乳食、介護食などとしても利用が広がっているようです。

 オートミールは、エン麦を圧ぺんや挽き割りなどをして加工や調理、食べやすくしたものです。原材料であるエン麦は、カナダやアメリカ、オーストラリアなどで生産、日本に輸入されていますが、これまでに報告をしてきた小麦の生産と同様、海外での生産現場で、収穫作業性の改善や乾燥具合のコントロールを狙った除草剤グリホサートによるプレハーベスト処理が行われていることが知られています。

 アメリカ環境保護団体EWGの新しいレポートでも、プレハーベストの影響による検出を示した報告があります(EWGレポート)。では、日本で流通しているオートミールはどうなのでしょうか。

 このレポートは、2021年、2023年に、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンさんとの共同調査として行ったデータと、分析センターの利用者さんから提供いただいた試料、分析センターの市場調査として購入したオートミール関連製品について調査をおこなった結果をまとめたものです。2~4年前とやや古いデータですが、これまで公開の機会がなかったことから、今回、改めてウェブページでご覧いただけるようにしました。

検査サンプルと検査法について

greenbeans

 2021年6月に一般ユーザーさんから検査サンプルとして提供をいただいたもの1検体、2021年7月に遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンさんとの共同調査としていただいた3検体、2023年2月に農民連食品分析センターで入手した1検体の合計5検体について検査を実施しました。

 原産国は、アメリカ2製品、オーストラリア2製品、フィンランド1製品となっています。栽培方法の区分としては、有機栽培のものが2製品でした。

  検査は、以下の分析条件で実施しました。定量下限は0.005ppmです。(詳細をクリックで続きを表示)

分析結果について

 5製品を検査したところ、1件からグリホサートが検出されました。単位はppmです。

表1 オートミール製品のグリホサート調査2021,2023の結果

No.

試料写真

試料名

輸入者・販売者・製造者など

原産国

グリホサート
(ppm)

S01

オートミール
(オーツ麦)
有機JASオーガニック

スローフードキッチン アメリカ 検出せず
S02

オートミール
Lot.:GBH 14:22
賞味期限:2022. 05

日本ケロッグ合同会社 オーストラリア 検出せず
S03

クエーカー
インスタントオートミール・オリジナル
賞味期限:2022.06.14

豊産業株式会社 オーストラリア 検出せず
S04

プレミアムピュア・オートミール
Lot:02369 09:02 1 / USA
賞味期限:2022.06/AH

日本食品製造合資会社 アメリカ 0.02
S05

オーガニックオートミール
(有機オートミール)

Lot:14601 15:27 1/FIN
賞味期限:2024.01/CE

イオン株式会社 フィンランド 検出せず

考察

  • 10商品を分析したところ、1件からグリホサートが検出されました。
  • 検出された濃度は0.005ppmで、食品衛生法の一律基準0.01ppmを下回っていることから、日本の食品衛生法上では、問題ないとして判断される数字として扱われます。
  • アメリカの環境保護団体EWGが2018年に報告したやや古いレポートでは、サンフランシスコ湾岸地域とワシントンDCエリアの食料品店で、EWGのスタッフが購入してきた28製品すべてでグリホサートの検出が認められたというものがあります(定量下限10ppb)。
  • EWGさんでは、2018年、2019年と継続してオーツ麦製品のグリホサート残留調査をおこなっています。2023年のレポートでは、有機ではないオーツ麦を使用する14製品から24サンプルを作成して調べたところ、全ての製品でグリホサートが検出されたこと、2018、2019年に比べ、検出されるグリホサートの平均残留量が低くなっている傾向があること、を報告しています。残留量が低くなっている理由として、業界大手のケロッグ社をはじめいくつかの企業が、グリホサートによるプレハーベスト処理を行っていない栽培者からだけオーツ麦を調達することを決定しているから、として評価をしています。
  • 例としてケロッグ社が上述のような決定をしたことを公式に表明しているプレスリリースなどのリンクを探してみたのですが、ウェブページ等としては見つけることができませんでした。これは、消費者団体やメディアなど第三者がケロッグ社に問合せをしたところ、回答を公式として得た、ということのようです。
  • 今回調査した製品には、カナダ産の原材料を含むものはありませんでしたが、関連情報として、カナダ産のオーツ麦には、グリホサートの使用について取り組みがあるようです。カナダの穀物・油種種子関連業界(Canola Council, Cereal Canada, Pulse Canadaなど)が中心に取り組んでいるカナダ産の適正な農産物輸出を掲げる「Keep it Clean」というプログラムには、オーツ麦の生産について、以下の提言が行われています。実効性はともかくとして、カナダでは、オーツ麦に一定、乾燥目的のグリホサートによるプレハーベスト処理は、少なくする方向の取り組みが存在していることはうかがえ、大変興味深いものです(収穫前除草は制限していないことを考えるとどの程度効果があるのかはよくわかりません。この取り組みで効果が上がるとすると、これまでどのぐらい乾燥目的での使用がされていたのかを示すことでもありかなと思います)。

    以下、Keep it Cleanのサイトより引用
    Glyphosate is registered for pre-harvest weed control. Do not use as a desiccant. To prevent unacceptable residues in the harvested grain, only apply pre-harvest glyphosate when grain moisture content is less than 30% in the least mature part of the field*.
    Consult with your grain buyer before using this product on oats. Some grain buyers may not accept cereal crops treated with pre-harvest glyphosate. Strictly follow the product label guidelines to minimize scrutiny in the global marketplace.
    *Secondary growth can impact grain moisture assessment.
    グリホサートは収穫前の雑草防除用として登録があります。乾燥剤としては使用しないこと。収穫物に品質を落とす(補足:雑草由来の破片や異穀などの)残渣物の混入を防ぐためと、圃場の最も成熟していない場所の穀物の含水率が30%未満である場合にのみ使用を認めます。
    オーツ麦でグリホサートを使用する際には、事前に穀物バイヤーに相談してください。いくつかのバイヤーはグリホサートによるプレハーベスト処理を行ったシリアルを容認しないことがあります。グローバル市場での影響を最小限にとどめるために製品ラベルのガイドラインに厳密に従いましょう。
    *2次的な成長(補足:穂発芽?を指す?)は、穀物の水分評価に影響を与える可能性があります。
    引用ここまで

農民連食品分析センターについて

分析サポーター会員登録 農民連食品分析センターは、1996年に多くの農業者や消費者の募金により設立された背景を持つ世界的にも珍しい分析施設です。募金による設立のため、企業や行政などの影響を受けることなく、独立した立場で活動を行っています。

 1996年の設立以来、私たちの調査活動は、募金で運営されています。正直なところ、私たちの活動に必要な財政は厳しいところにあります。消費者や農民の立場に立った活動を続けていくためにも、みなさんからの支援が欠かせません。

 分析センターを支援していただく会員「分析センターサポーター会員」の募集をしています。年会費一口5,000円以上で、サポーター会員になることが出来ます。私たちの活動を支えてください。よろしくお願い致します。

分析支援募金と募金分析センターサポーター会員登録のページ