夏、暑い日は冷たい飲み物が欲しくなります。糖分もカフェインも無い麦茶を手に取る方が多いようです。子供からお年寄りまで親しまれている麦茶ですが、原料大麦の6割が輸入に頼っています。
麦茶の原料となる大麦は、ビール、ウィスキー、麦焼酎などに使われ、日本国内で年に約34万トンが流通しています(食料用大麦の総需要量の推移・2020年)。六条大麦、二条大麦などの種類があり、麦茶の原料としては六条が使われ、その3分の2が輸入で賄われています。その主な輸入国はカナダです。ちなみに、ビールに使われるのは二条で、オーストラリアから輸入されたものが主となっています
海外での麦類の生産では、日本では麦の生産では認められていない除草剤グリホサートの「プレハーベスト」散布が行われることがあります。グリホサートを散布し、畑にはびこっている雑草を枯らすことで機械での刈り取りがスムーズに出来るため、特に大規模栽培の時に作業の効率化が出来ます。また、麦自体も枯らすことでの品質の向上も狙えるとされています。このことから麦茶用の大麦にも除草剤グリホサートが残留しているのではないかという疑いがありました。
このレポートは、2021年に分析サポーター会員さん向けに発行した分析センター検査室ニュース2021夏号に掲載された「市販のペットボトル麦茶10件の残留グリホサート調査結果2021」をウェブページ用に書き直したものです。
2021年5月に市販のペットボトル入りの麦茶を10検体を購入し、試験試料としました。購入先は、主にコンビニやスーパーで行いました。検査対象の商品には、ママパパさんからも相談がある子供向け、赤ちゃん向けのものも対象にしました。
主原材料の大麦の原産国は、国産が6商品、国産とカナダの混合が1商品、カナダ、オーストラリア、その他が1商品、表記なしが2商品となっています。
検査は、以下の分析条件で実施しました。定量下限は0.005ppmです。(詳細をクリックで続きを表示)
グリホサートの残留検査は、高速液体クロマトグラフ質量分析計を利用した弊センター開発のグリホサート試験法で実施しました。検査対象成分は、グリホサートおよびその代謝物AMPA、グルホシネートとなっています。本試験によるグリホサートの定量限界は0.005 ppm、AMPAは定量限界は0.01 ppmです。
10商品分析したところ、1件からグリホサートが検出されました。この商品は原材料に原産国の記載はありませんでした。単位はppmです。
表1 市販のペットボトル麦茶10件の残留グリホサート調査結果2021
No. | 試料写真 |
試料名 |
販売者または製造者 |
原料大麦の記載内容 |
グリホサート |
---|---|---|---|---|---|
P01 |
![]() |
麦茶(セブンプレミアム) |
セブンイレブン 株式会社ニッセー |
六条大麦(日本、カナダ) | 痕跡 |
2021年に生コーヒー豆からグリホサートが出るかどうかについて調査をおこなっています。この時、焙煎後でもグリホサートが検出されるかどうかについて予備試験を実施しています。詳細は、レポートページを見ていただければと思いますが、高温という条件にさらされる焙煎後でもグリホサートが残留することもあるようです。
本調査は、2021年におこなわれたものです。ウェブにデータ公開をしたのが2025年ですから、調査から4年ほど経過してしまっています。改めて、市販ペットボトル麦茶の調査を行う機会が作れればと考えています。また、ペットボトルではなく、抽出前の麦茶粒ではどういった状況なのかなどについても調べて見たいところです。ぜひ皆様からの調査支援、よろしくお願い致します。
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