[ショートレポート]市販ペットボトル麦茶のグリホサート残留調査2021

top
2025.7.30公開

はじめに

 夏、暑い日は冷たい飲み物が欲しくなります。糖分もカフェインも無い麦茶を手に取る方が多いようです。子供からお年寄りまで親しまれている麦茶ですが、原料大麦の6割が輸入に頼っています。

 麦茶の原料となる大麦は、ビール、ウィスキー、麦焼酎などに使われ、日本国内で年に約34万トンが流通しています(食料用大麦の総需要量の推移・2020年)。六条大麦、二条大麦などの種類があり、麦茶の原料としては六条が使われ、その3分の2が輸入で賄われています。その主な輸入国はカナダです。ちなみに、ビールに使われるのは二条で、オーストラリアから輸入されたものが主となっています

 海外での麦類の生産では、日本では麦の生産では認められていない除草剤グリホサートの「プレハーベスト」散布が行われることがあります。グリホサートを散布し、畑にはびこっている雑草を枯らすことで機械での刈り取りがスムーズに出来るため、特に大規模栽培の時に作業の効率化が出来ます。また、麦自体も枯らすことでの品質の向上も狙えるとされています。このことから麦茶用の大麦にも除草剤グリホサートが残留しているのではないかという疑いがありました

 このレポートは、2021年に分析サポーター会員さん向けに発行した分析センター検査室ニュース2021夏号に掲載された「市販のペットボトル麦茶10件の残留グリホサート調査結果2021」をウェブページ用に書き直したものです。

検査サンプルと検査法について

greenbeans

 2021年5月に市販のペットボトル入りの麦茶を10検体を購入し、試験試料としました。購入先は、主にコンビニやスーパーで行いました。検査対象の商品には、ママパパさんからも相談がある子供向け、赤ちゃん向けのものも対象にしました。

 主原材料の大麦の原産国は、国産が6商品、国産とカナダの混合が1商品、カナダ、オーストラリア、その他が1商品、表記なしが2商品となっています。

  検査は、以下の分析条件で実施しました。定量下限は0.005ppmです。(詳細をクリックで続きを表示)

分析結果について

 10商品分析したところ、1件からグリホサートが検出されました。この商品は原材料に原産国の記載はありませんでした。単位はppmです。

表1 市販のペットボトル麦茶10件の残留グリホサート調査結果2021

No.

試料写真

試料名

販売者または製造者

原料大麦の記載内容

グリホサート
(ppm)

S01

ベビー麦茶

Lot.:1607B
賞味期限:2022.01.31

ビジョン株式会社
ニットービバレッジ株式会社
大麦
(国産)
検出せず
S02 赤ちゃん用むぎ茶 (株)西松屋チェーン
株式会社サーフビバレッジ
六条大麦
(長野県産)
検出せず
S03 赤ちゃんのむぎ茶

Lot.:2242130834
賞味期限:2021.12 +K23
アカチャンホンポ(株)伊藤園
株式会社日本キャンパック
大麦
(石川県)
検出せず
S04 ベビーむぎ茶

Lot.:0937.
アサヒグループ食品株式会社 六条大麦
(国産)
検出せず
S05 麦茶

賞味期限:2022.03 +3F
ローソンブランド
アサヒ飲料(株)
六条大麦 0.005
S06 麦茶

賞味期限:2022.2
YAMAZAKIブランド
(株)伊藤園
六条大麦
(日本)
検出せず
S07 香ばし麦茶

Lot.:+A13 .09:40S
賞味期限:2022.2 
ファミリーマートブランド
(株)伊藤園
六条大麦 検出せず
S08 むぎ茶

賞味期限:2021.11BG 09:34
セブンイレブンブランド
(株)ジャスティス
神奈川柑橘果工株式会社大井川工場
六条大麦
(国産、カナダ産)
検出せず
S09 健康ミネラル麦茶

Lot.:+A23 15:55L
賞味期限:2022.2
(株)伊藤園 大麦
(カナダ、オーストラリア、その他)
検出せず
S10 麦茶

Lot.:C19:26 03
賞味期限:
イオン(株)
ハルナプロデュース株式会社
大麦
(国産)
検出せず

考察

  • 10商品を分析したところ、1件からグリホサートが検出されました。この商品は原材料に原産国の記載はありませんでした。単位はppmです。
  • 検出された濃度は0.005ppmで、食品衛生法の一律基準0.01ppmを下回っていることから、食品衛生法上、問題ないとして判断される数字として扱われます。
  • 麦茶用の大麦は、高温で焙煎処理が行われます。こういった処理が行われた後の状態の麦からもグリホサートが検出されることがあるというのは、大変興味深いものです。
  • 今回の調査とは別に、京都に住む分析サポーターYさんからの支援で、プレ試験を行ったコンビニの麦茶からも出た事例があります(予備調査表1)。国産表記のものからは検出されなかったことから、麦茶を飲むときに、グリホサートの摂取を極力抑えたい方は、原料の原産地を確認すると良いと思われます。

    表2 プレ試験結果(2020年)
    No.

    試料写真

    試料名

    販売者または製造者

    原料大麦の記載内容

    グリホサート
    (ppm)

    P01 麦茶(セブンプレミアム)
    セブンイレブン
    株式会社ニッセー
    六条大麦(日本、カナダ) 痕跡

補足

 2021年に生コーヒー豆からグリホサートが出るかどうかについて調査をおこなっています。この時、焙煎後でもグリホサートが検出されるかどうかについて予備試験を実施しています。詳細は、レポートページを見ていただければと思いますが、高温という条件にさらされる焙煎後でもグリホサートが残留することもあるようです。

 本調査は、2021年におこなわれたものです。ウェブにデータ公開をしたのが2025年ですから、調査から4年ほど経過してしまっています。改めて、市販ペットボトル麦茶の調査を行う機会が作れればと考えています。また、ペットボトルではなく、抽出前の麦茶粒ではどういった状況なのかなどについても調べて見たいところです。ぜひ皆様からの調査支援、よろしくお願い致します。

 

農民連食品分析センターについて

分析サポーター会員登録 農民連食品分析センターは、1996年に多くの農業者や消費者の募金により設立された背景を持つ世界的にも珍しい分析施設です。募金による設立のため、企業や行政などの影響を受けることなく、独立した立場で活動を行っています。

 1996年の設立以来、私たちの調査活動は、募金で運営されています。正直なところ、私たちの活動に必要な財政は厳しいところにあります。消費者や農民の立場に立った活動を続けていくためにも、みなさんからの支援が欠かせません。

 分析センターを支援していただく会員「分析センターサポーター会員」の募集をしています。年会費一口5,000円以上で、サポーター会員になることが出来ます。私たちの活動を支えてください。よろしくお願い致します。

分析支援募金と募金分析センターサポーター会員登録のページ