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はじめに

  調査レポート「リンゴの皮と中身とネオニコチノイド系農薬アセタミプリドの分布」 で浸透移行型の特徴を持つネオニコチノイド系農薬は、皮を剥いても、内側まで染みこんでいるため、皮を剥いてもその除去効果は、それほど多くはならないことを報告しました。
 浸透移行することで、隅々まで行き渡り、継続した効果が得られるというネオニコチノイド系農薬のメリットは、食べる側から見ると、とても悩ましい実態を作っていることがわかります。
 このレポートでは、みかんでも皮を剥いたら、ネオニコチノイド系農薬は減るのかどうかを調べてみたものです。またこの調査では、同一サンプルから有機リン系農薬も合わせて検出されたことから、ネオニコチノイド系農薬と有機リン系農薬の残留の違いについて比較もおこなうことができました。
 その結果、ネオニコチノイド系農薬のジノテフランは、内側まで染みこんでいて、皮を剥いても除去効果はわずかでしたが、一方、有機リン系農薬のメチダチオンは、皮でとどまっていて、皮を除けばほぼ除去できてしまうといった、特徴の差が見えてきました。

分析方法などについて

試験法について

結果

 4商品のみかんから検出された農薬は、あわせて6成分(アセタミプリド、ジノテフラン、クロチアニジン、チアメトキサム、クロルピリホス、メチダチオン)でした(表4)。このうち4成分がネオニコチノイド系農薬でした。それぞれの農薬について、結果の考察を行うととても複雑になってしまうため、ここでは、3商品から共通して検出されたネオニコチノイド系農薬のジノテフランと、有機リン系農薬のメチダチオンについて比較、解説をします。

 表1のとおり、ジノテフランは、皮だけでなく、中身からも検出されました。ネオニコチノイド系農薬の特徴である浸透移行性という特徴によって、私たちが食べる中身にも浸透をしていることがわかります。今回検査をしたサンプルの例では、皮を除いてもみかん全体に残留しているジノテフランの10~29%程度しか減らすことはできないことになります。一方、メチダチオンは、中身には浸透していないようで、皮からしか検出されませんでした。つまり、メチダチオンは皮を除けばほぼ全て除去できる関係にあることがわかります。

表1 ジノテフランとメチダチオンの部位別存在割合
ジノテフラン
メチダチオン
中身
中身
みかん商品No.1
みかん商品No.1
29 %
71 %
100 %
0 %
みかん商品No.2
みかん商品No.2
10 %
90 %
100 %
0 %
みかん商品No.3
みかん商品No.3
15 %
85 %
100 %
0 %
平均値
18 %
82 %
100 %
0 %

 表2表3に皮とその中身にどう分布しているかを具体的な数値で示しました。表2はジノテフランについてのみまとめたものです。表3はメチダチオンについてのみまとめたものです。実際の残留量などが確認できます。

表2 みかんから検出されたネオニコチノイド系農薬「ジノテフラン」の濃度と含有量
サンプル ランダムに選んだ1個 農薬名


中身
中身の方に含まれている割合(%)
むけた皮の重さ
(g)
皮から検出されたジノテフランの濃度
(ppm)
皮に含まれていたジノテフランの量
(μg)
中身の重さ
(g)
中身から検出されたジノテフランの濃度
(ppm)
中身に含まれていたジノテフランの量
(μg)
みかん商品No.1
みかん商品No.1
玉A ジノテフラン 23.2 0.064 1.48 79.6 0.04 2.82 65.6
玉B 17.0 0.140 2.38 81.9 0.07 5.84 71.0
玉C 16.5 0.191 3.15 94.9 0.09 8.67 73.4
みかん商品No.2
みかん商品No.2
玉A 29.4 0.025 0.75 87.0 0.10 8.59 92.0
玉B 27.1 0.013 0.36 108 0.02 2.10 85.5
玉C 26.5 0.013 0.34 112 0.02 2.13 86.1
みかん商品No.3
みかん商品No.3
玉A 17.4 0.033 0.57 82.2 0.05 4.09 87.8
玉B 20.9 0.096 2.01 80.2 0.11 8.91 81.6
玉C 16.1 0.070 1.12 82.2 0.10 7.85 87.5
表3 みかんから検出された有機リン系農薬「メチダチオン」の濃度と含有量
サンプル ランダムに選んだ1個 農薬名


中身
可食部比率(%)
むけた皮の重さ
(g)
皮から検出されたメチダチオンの濃度
(ppm)
皮に含まれていたメチダチオンの量
(μg)
中身の重さ
(g)
中身から検出されたメチダチオンの濃度
(ppm)
中身に含まれていたメチダチオンの量
(μg)
みかん商品No.1
みかん商品No.1
玉A メチダチオン 23.2 0.028 0.655 79.6 検出せず 0 0
玉B 17.0 0.030 0.505 81.9 検出せず 0 0
玉C 16.5 0.087 1.43 94.9 検出せず 0 0
みかん商品No.2
みかん商品No.2
玉A 29.4 0.080 2.36 87.0 検出せず 0 0
玉B 27.1 0.321 8.71 108 検出せず 0 0
玉C 26.5 0.261 6.91 112 検出せず 0 0
みかん商品No.3
みかん商品No.3
玉A 17.4 0.402 6.99 82.2 検出せず 0 0
玉B 20.9 0.629 13.1 80.2 検出せず 0 0
玉C 16.1 0.270 4.35 82.2 検出せず 0 0

考察と補足

表4 みかんから検出された農薬一覧

商品名

サンプルNo.

皮
皮の検出濃度(ppm)

中身
中身の検出濃度(ppm)

みかん商品No.1
みかん商品No.1

玉A

ジノテフラン
メチダチオン

0.064
0.028

ジノテフラン

0.035

玉B

アセタミプリド
ジノテフラン
クロルピリホス
メチダチオン

0.005
0.140
0.25
0.030

ジノテフラン

0.071

玉C

アセタミプリド
ジノテフラン
クロルピリホス
メチダチオン

痕跡
0.191
0.58
0.086

ジノテフラン

0.091

みかん商品No.2
みかん商品No.2

玉A

ジノテフラン
メチダチオン

0.025
0.080

アセタミプリド
ジノテフラン

痕跡
0.099

玉B

ジノテフラン
メチダチオン

0.013
0.321

ジノテフラン

0.019

玉C

ジノテフラン
メチダチオン

0.013
0.261

ジノテフラン

0.019

みかん商品No.3
みかん商品No.3

玉A

ジノテフラン
メチダチオン

0.033
0.402

ジノテフラン

0.050

玉B

クロチアニジン
ジノテフラン
メチダチオン

痕跡
0.096
0.629

クロチアニジン
ジノテフラン
チアメトキサム

痕跡
0.111
痕跡

玉C

クロチアニジン
ジノテフラン
チアメトキサム
メチダチオン

痕跡
0.070
痕跡
0.270

クロチアニジン
ジノテフラン
チアメトキサム

痕跡
0.096
痕跡

みかん商品No.4
みかん商品No.4

玉A

アセタミプリド
メチダチオン

0.007
7.67

アセタミプリド

痕跡

玉B

アセタミプリド
メチダチオン

0.003
4.86

検出せず

玉C

アセタミプリド
メチダチオン

痕跡
2.67

検出せず

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