[ショートレポ]乳幼児向け果物ジュースやおやつの残留農薬調査2023

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2025.7.29公開

はじめに

 今日、忙しいママ、パパのためにと、乳幼児向けのさまざまな食品が開発、認可、販売されるようになりました。スーパーなどの売り場で足を止めてみると、目をみはるほどのスペースが設けられていることがわかるはずです。

 また、製造を行っている会社さんの多くが、味だけでなく、保存性や健康的要素などを配慮しながら商品の開発や供給を行っていることがうかがい知れるパッケージの工夫をしていることから、お買い物中のママパパもどれを買おうかよく考えたうえで商品選びができる情報と環境が一定あるようです。

 ただ、農薬に関連した情報は少なく、農薬を避けた食品や製造時に農薬について検査と品質管理を行っているを会社さんの製品を選びたいといった場合、単に有機食材を利用しているかどうかで選ぶという方法に限られるようです。

 ママ、パパさんたちから「果物って、いろいろと農薬が検出されるって言うけど、じゃあ、乳幼児向けの果物を使ったジュースやおやつはどうなの?」というリクエストをいただきましたので、検査をしてみました。ー

 このショートレポートは、2023年に9製品について行った調査の結果をまとめたものです。一般向けの公開の機会がなかなかなかったデータでしたが、なにかと問い合わせなどもありますので、見られるようにしておきました。できるなら、ちゃんとご飯やおやつを作ってあげる!をモットーにしたいところですが、この市販品の調査データが、子どもも喜ぶ、ママもパパも疲れすぎない子育ての参考になれば幸いです。

検査法について

測定雰囲気 2023年3月に、市販の幼児向け果物ジュース9商品を購入し、残留農薬一斉分析LC-MS/MS131成分の農薬について検査をしてみました。

 今回の調査では、キユーピー株式会社3製品、アサヒグループ食品株式会社3製品、森永乳業株式会社3製品の内訳となっております。いずれも瓶詰め、若しくは滅菌パックの製品を対象としました。

  • 測定装置:島津製作所 超高速トリプル四重極型質量分析計LCMS-8050システム
  • 分離カラム:Kinetex Biphenyl(100 x 2.1mm, 2.6μm)
  • 測定モード:ESI / MRM法による
  • 定性定量:放射性同位体標識付標準品を用いた標準添加法・内部標準法
  • 定量下限:各成分 0.1 ppb
  • データ処理:LCMS SolutionおよびInsight による解析

分析結果について

 本試験法で9製品について検査をおこなったところ、いずれの製品からも検査対象成分の検出は認められませんでした(表1)。

表1 ベビー向け果物ジュースやおやつの残留農薬検査結果2023


資料写真

試料名

製造者

分析結果

S01

ももと白ぶどう

賞:2024.12.10 LCA

キユーピー株式会社

検出せず

S02

トマトとりんご

賞:2024.12.2 LBC

キユーピー株式会社

検出せず

S03


ミックスフルーツ

賞:2024.12.14 JDG

キユーピー株式会社

検出せず

S04


1歳からのMYジュレドリンク りんご100

賞:2024.2/B5 08:22 1

ハウス食品(株)SG

検出せず

S05


1歳からのMYジュレドリンク 1/2食分の野菜&くだもの オレンジ味

賞:2024.1/B3 10:05 A

エスビー食品(株)

検出せず

S06


1歳からのMYジュレドリンク 1/2食分の野菜&くだもの ぶどう味

賞:2024.1/B2 08:31 B

エスビー食品(株)

検出せず

S07


フルーツでおいしいやさいジュレ(黄色の野菜とくだもの)

賞:24.02.11 10:36 E

ハウス食品(株)SG

検出せず

S08


1食分の!やさいジュレ(20種類の野菜とくだもの)

賞:24.02.18 17:41 C

エスビー食品(株)

検出せず

S09


1食分の!やさいジュレ(たっぷり緑黄色野菜とくだもの)

賞:24.02.21 14:06 G

ハウス食品(株)SG

検出せず

考察

  • 今回の調査では、検査対象成分の農薬の検出はありませんでした。ただし、今回の結果を持って、上記製品また乳幼児向け製品のすべてが、農薬の残留がないということを示すものではありません。
  • 乳幼児向けの製品については、特に、ネオニコチノイド系農薬の検出を気にされる方から相談が届くことがあります。ネオニコチノイド系農薬は、これら製品の原材料として使われる果物や野菜での検出される機会がことがこれまでの調査でわかっており、加工した製品からも検出の可能性があるのではないかと考えていましたが、今回の調査では、いずれの検出も認められませんでした。この点については、調査の経験上、驚きました。
  • 検出がなかった理由については、
    ・農薬を使用していない果物や野菜、液糖、原水などを原材料としている
    ・加工の途中で分解などがあり、検出できないレベルまで減少している
    ・検査対象の農薬の使用や暴露がない環境で生産された(対象以外の農薬の検出の可能性はある)
    などが可能性として考えられますが、断定できるものではありません。
  • 今回の結果が、乳幼児向けということで、農薬が検出されないようメーカーさんが管理を行った原材料を選び、製造を行っている対策の結果を示しているとすると、大変興味深いと考えます。
  • 実際の農薬使用や製品管理などについては、直接メーカーさんのウェブページや問合せなどで確認や、または応援などをするのが良いのではないかと思います。
  • 今後も調査費用が確保できれば、その他のメーカーの製品についても調査を拡げて、ママパパのお買い物の参考になる情報を提供していきたいと考えています。分析サポーターや募金への協力をお願いいたします。

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