[ショートレポ]スパイス類のネオニコチノイド系農薬などの残留分析結果2017

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2023.3.6公開

はじめに

 私たちの食卓を彩る様々なスパイス。日本はスパイス原料の多くを海外から輸入しています。このショートレポートは、2017年に市販のスパイスについて、ネオニコチノイド系農薬を含む131成分の残留農薬検査を実施した結果をまとめたものです。この調査では、残留農薬の検出は認められるものの、いずれも検出濃度は小さく、基準値を超過すると考えられる商品はありませんでしたが、ネオニコチノイド系農薬が、中国、マレーシアを原産地とする製品から検出されており、アジア地域にも使用が普及していることがうかがえる結果となっています。6年前に行った調査で、古いデータではありますが、参考にしてみてください。

検査法について

測定雰囲気 板橋区の商店街などで販売されていたスパイスを購入し、試験試料としました。

  一味とうがらし1製品、カイエンペッパー2製品、クローブ2製品、シナモン2製品、ターメリック2製品、バジル2製品、コショウ3製品、月桂樹2製品の合計で16製品を対象に、以下の条件で、試験を実施しました。(詳細をクリックで続きを表示)

  • 測定装置:島津製作所 超高速トリプル四重極型質量分析計LCMS-8050システム
  • 分離カラム:Kinetex Biphenyl(100 x 2.1mm, 2.6μm)
  • 測定モード:ESI / MRM法による
  • 定性定量:放射性同位体標識付標準品を用いた標準添加法・内部標準法
  • 定量下限:各成分 0.1 ppb
  • データ処理:LCMS SolutionおよびInsight による解析

測定雰囲気 日本農薬工業会の作用機構分類にあるネオニコチノイド系農薬7成分、近年、ネオニコチノイド系農薬に類似した用途や特徴をもつとされる農薬7成分、さらにアセタミプリド代謝物のN-デスメチルアセタミプリドの合計15成分を対象としています。内訳は以下の通りです。

ネオニコチノイド系殺虫剤7剤 ジアミド系殺虫剤1剤
アセタミプリド クロラントラニリプロール
クロチアニジン フェニルピラゾール系殺虫剤2剤
ジノテフラン エチプロール
イミダクロプリド フィプロニル
ニテンピラム フロニカミド系殺虫剤1剤
チアクロプリド フロニカミド
チアメトキサム ブテノライド系殺虫剤1剤
スルホキシイミン系殺虫剤(ネオニコ類似)1剤 フルピラジフロン
スルホキサフロル アセタミプリド代謝物
メソイオン系殺虫剤(ネオニコ類似)1剤 N-デスメチルアセタミプリド
トリフルメゾピリム

分析結果について

 本試験法で16製品について検査をおこなったところ、7製品から検出が認められました。

表1 スパイス類の残留農薬分析結果2017


資料写真

試料名

製造者

原産国

分析結果

ppm

S01

一味唐辛子

賞:2020.5.14

エスビー食品(株)

記載なし

クロチアニジン
チアメトキサム
イミダクロプリド

痕跡
0.002
0.002

S02

カイエンペパー
GABAN

賞:2019.5.13

ハウス食品(株)SG

中国

イミダクロプリド
アセタミプリド
カルボフラン

痕跡
0.006
痕跡

S03

カイエンペパー
マコーミック

賞:2018.10.7

ユウキ食品(株)YS1

中国

イミダクロプリド
アセタミプリド

0.003
0.003

S04

クローブ
GABAN

賞:2018.11.17

ハウス食品(株)SG

記載なし

ベンダイオカルブ

0.004

S05

クローブ

賞:2018.2.11

エスビー食品(株)

マレーシア

検出せず


S06

シナモンスティック

賞:2019.1.30

エスビー食品(株)

中国

検出せず


S07

シナモン
GABAN

賞:2019.6.29

ハウス食品(株)SG

マレーシア

検出せず


S08

ターメリック
(うこん)

賞:2019.1.14

エスビー食品(株)

インド

検出せず


S09

ターメリック
GABAN

賞:2019.5.6

ハウス食品(株)SG

マレーシア

検出せず


S10

バジル
GABAN

賞:2020.6.9

ハウス食品(株)SG

アメリカ

イミダクロプリド
リニュロン
アゾキシストロビン

0.408
0.005
0.006

S11

バジル

賞:2019.5.22

エスビー食品(株)

エジプト

検出せず


S12

あらびきコショー
ブラックペッパー

賞:2020.2.20

エスビー食品(株)

記載なし

チアメトキサム
アセタミプリド
ジウロン
フェノブカルブ

0.064
0.003
0.025
痕跡

S13

ブラックペパー
GABAN

賞:2019.4.6

ハウス食品(株)SG

マレーシア

チアメトキサム
アセタミプリド
フェノブカルブ

0.010
0.007
痕跡

S14

ブラックペパー
マコーミック

賞:2018.12.14

ユウキ食品(株)YS1

記載なし

検出せず


S15

ローリエ
GABAN

賞:2020.2.26

ハウス食品(株)SG

アメリカ

検出せず


S16

ローレルホール

賞:2019.5.2

エスビー食品(株)SBTI

トルコ

検出せず


考察

  • 今回検出された農薬について、食品衛生法の残留基準値を超過しているものはありませんでした。
  • 検出された農薬のうち、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムは、ネオニコチノイド系農薬です。原産地が、中国、マレーシアの製品から検出が認められています。以前、調査をおこなった赤ワインでも、広い地域で検出されることが示されており、ネオニコチノイド系農薬は、現在、世界で広く使用される農薬となっていることを示す結果といえます。
  • バジルからリニュロン、コショーからジウロンが検出されています。これらは除草剤として広く使われている農薬です。栽培園地の管理に使用されたものが飛散して検出されたと考えられます。
  • 今回の調査は、2017年に行われたもので、データとしては時間が経っているといえます。この調査後、2018年には、EUでは、ネオニコチノイド系農薬の使用禁止が決定されるなどの制限に進む動きがすすむ一方、農業の厳しい経営状況を支える効果が大きいことや、浸透移行型で、少量でも効果が高いネオニコチノイド系農薬の性能が受け入れられ、普及が進んでいるという一面があります。今後の市場調査の計画は、今のところありませんが、改めて、スパイス類の調査をおこなうと、また違った傾向が見えてくるのかもしれません。

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