2024.8.28公開


分析結果一覧表

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暫定指針値(50 ng/L)を超過している地点についての解説-2024年時点-

石神井川(東京都練馬区)の調査結果について

 石神井川で採取された河川水(採水日2023年12月11日)から検出されたPFOS、PFOAの合計値は、環境省が設定する暫定指針値である50 ng/Lを超過する結果となりました。近隣の暮らしの中で広く使われてきたものや、こうした成分を利用して製造等を行ってきた事業者などから排出されたものに由来する検出と推測されます。

 採水地点は、川底のあちこちで湧水を目視で確認できる場所であること、また、石神井川は雨が降ると、近隣地域の表面水が下水として流入する仕組みとなっていること、などを踏まえると、単に川を流れている河川水だけでなく、湧水や下水も含めた形で、PFOS, PFOAが流入している可能性が原因としてあげられます。

 今回の調査だけでは、具体的に排出源がどこなのかといったことを判断することはできませんが、より多くの地点を対象にして、複数の時期で測定を行えば、排出源が広域にわたるのか、特定の場所に由来するのかなどを判断できる可能性があります。また、こうした調査の取り組みができれば、必要に応じて対策や河川利用時の調整に役立つと考えます。

 現在、石神井川の水は、飲用水、農業用水、工業用水として利用は行われていないことから(参考:東京都建設局:石神井川河川整備計画)、飲料水や農産物への心配はしなくてもよい状況にあるとは言えます。しかし、今回の検出に繋がった主な混入源が、湧水であった場合、地下水の汚染が起きていることが考えられます。近隣で、地下水を利用した農業生産などが行われている場合があれば、生産者が安心して生産ができるよう、また地場産農産物を消費者が安全・安心に食べられるよう、地下水の検出状況について適切なデータ提供と案内などが行われることが望まれるものでます。

引地川(神奈川県厚木市)の調査結果について

 2022年に、「引地川で子ども達に川遊びをしてもらう取り組みをしているが、川の水が不自然に泡立っていると感じることがこれまであった。遊ばせても大丈夫な水質なのか相談に乗って欲しい。」という連絡がありました(採水日2022年6月21日)。当時は、PFASの検査態勢が無かったため、簡易の水質検査に絞った対応のみとなっていましたが、この試料は、冷蔵され、現在まで保管されていました。2024年にPFAS7成分の検査態勢が整ったことを契機に改めて検査を行い、得られた結果となっています。

 採水から2年経っている試料ですが、永遠の化学物質と言われる由縁か、2024年の検査時でも、PFOAとPFOSの合計で、国の規制値を越える162.19 ng/L, 149.75ng/Lの検出が認められています。

 引地川は、環境省の調査、市民団体の調査でもPFASが高濃度で検出されていることを示すデータがあります。検出の由来は、 厚木基地で使用された消化剤という指摘があり、その影響が疑われます。

鬼付女川(宮崎県児湯郡新富町)の調査結果について

 PFOAとPFOSの合計で、134.1 ng/Lの検出が認められました。発生源については、地域の工場などさまざまな条件を考察するほか、より多くの地点で検査を行う必要がありますが、特に、この場所は、航空自衛隊新田原基地の下流部にあたる場所で、基地で使用された泡消化剤などによる影響が疑われる条件があります。

用水路の水1, 2および3 (秋田県大館市花岡)の調査結果について

 秋田県大館市花岡の用水路で採水された「用水路の水1」,「用水路の水2」では、319 ng/L, 436 ng/Lと高値での検出が認められています。

 Google Map上ではストリートビューを使わないと確認できませんが、県道192号線に沿うように用水路があります。

 用水路は、産業廃棄物処分業者さんがある山側(北西側)から来る水と、集落側(北東側)から来る水が、高値が検出された採水場所のやや上流で合流する形となっています。

 集落側から流れてくる水を検査した「用水路の水3」は、8.2 ng/Lとなっており、用水路の水1, 2と比べても低く、PFASの流入は、山側からの可能性であることが推察されます。

 ここは、かつて花岡鉱山があった地域です。現在は、跡地を利用して産業廃棄物処理業者さんが、リサイクルや処理事業を行っています。今回の高値での検出は、3地点での検査の結果を踏まえると、この処分場側の地域と関係がある可能性があります。ただ、この業者さんは、日本でも屈指とされるリサイクルや処理技術をもっている企業グループの一つで、環境負荷を起こさない取り組みや排出に関わる管理をしていることが知られています。このような背景を踏まえれば、PFAS関連の排出にも対策がとられている可能性もあり、今回の排出には関連がないことも考えられます。 また、そもそも日本では、海外の動きに出遅れ、国が明確な管理基準などを整えてこなかったことに起因して、排出の可能性のある業者が対応を進められない状況を作り出していたことも重要な課題なのだと考えます。

 今後、調査点を増やすなど、原因の解明が求められます。また、地域で、地下水を飲用している人がいないかなどについても調査が必要と考えます。

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