先日、ふと、農民運動全国連合会の給湯室で長らく使われてきた電気ポットを確認したところ、製造年が2007年であることが背面シールからわかりました。製造年から判断をすれば、日本でPFASの法規制が始まる前に製造された製品にあたります。
いわゆる焦げ付かないフライパンや錆びないない割れないポットなどでは、使用されるフッ素樹脂の製造過程で、PFOAが使用されていたことが知られています。日本におけるPFAS関連物質の規制は、2010年にPFOS、2021年にPFOA、2024年にPFHxSについて設定されました。今回発見した農民運動全国連合会の給湯室にあったポットは2007年製です。PFOAの規制が始まったのは2021年ですから、このポットは、規制の始まるより前の製品ということになります。
実際には、有機フッ素系の樹脂などを製品に使用していたメーカーのいくつかは、規制が始まるより前に、自主的に規制対象となるPFASの使用をやめる取り組みを開始していたことが知られています。さて、このような古い製品からは、PFASは検出されるものなのでしょうか。調べて見ました。
このレポートは、身の回りにあるフッ素樹脂を使用する製品から、どんなPFASが検出されるかを、実際に検査してみようという調査の第1回目です。
試験の対象とした電気ポットは、農民運動全国連合会の給湯室に設置されていた象印マホービン株式会社製「CD-PA50型電気ポット(2007年製)」、「製造番号0271213」です。長らく事務局員や来賓の方への給茶や食事などに使用されてきたポットです。
2025年7月15日に板橋区の水道水を、電気ポットの上限規定量である5リットルまでいれて沸騰をさせた後、3時間保温しました。電源を抜いた後、3時間冷ましたものを検査試料としました。
検査対象のPFASは、PFOA, PFOS, PFHxS, N-MeFOSAA, PFDA, PFUnDAの7成分としました。試験方法については、「詳細」をクリックで表示します。
試料について精製処理をおこなった後、高速液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用い、対象成分の定性、定量を行います。測定対象成分の定量下限値は、PFOA, PFOS, PFHxS, N-MeFOSAA, PFDA, PFUnDAで0.2 ng/Lとなります。PFNAについては0.6 ng/Lとなります。
詳細:分析センター:水試料に含まれるPFAS検査コース
PFAS7成分について検査を実施したところ、表1の結果となりました。
表1 2007年製象印マホービン製の電気ポットCD-PA50のPFAS7成分検査結果
ID | サンプル名 | PFOA | PFNA | 総PFHxS(直+分) | 総PFOS(直+分) | PFDeA | PFUnDeA | N-MeFOSAA | PFOA+PFOS | PFOA+PFOS+PFHxS+PFNA | 米アカデミーズ7項目 |
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P01 | 板橋区大山のマンションで |
1.7 | 1.6 | 0.4 | 0.9 | N.D. | 0.2 | N.D. | 2.6 | 4.6 | 4.8 |
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