[身近な製品のPFAS検出テストシリーズ] その1
-2007年製 象印マホービン製の電気ポットCD-PA50-

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2025.8.5公開

はじめに

 先日、ふと、農民運動全国連合会の給湯室で長らく使われてきた電気ポットを確認したところ、製造年が2007年であることが背面シールからわかりました。製造年から判断をすれば、日本でPFASの法規制が始まる前に製造された製品にあたります。

 いわゆる焦げ付かないフライパンや錆びないない割れないポットなどでは、使用されるフッ素樹脂の製造過程で、PFOAが使用されていたことが知られています。日本におけるPFAS関連物質の規制は、2010年にPFOS、2021年にPFOA、2024年にPFHxSについて設定されました。今回発見した農民運動全国連合会の給湯室にあったポットは2007年製です。PFOAの規制が始まったのは2021年ですから、このポットは、規制の始まるより前の製品ということになります。

 実際には、有機フッ素系の樹脂などを製品に使用していたメーカーのいくつかは、規制が始まるより前に、自主的に規制対象となるPFASの使用をやめる取り組みを開始していたことが知られています。さて、このような古い製品からは、PFASは検出されるものなのでしょうか。調べて見ました。

 このレポートは、身の回りにあるフッ素樹脂を使用する製品から、どんなPFASが検出されるかを、実際に検査してみようという調査の第1回目です。

検査サンプルと検査法について

 試験の対象とした電気ポットは、農民運動全国連合会の給湯室に設置されていた象印マホービン株式会社製「CD-PA50型電気ポット(2007年製)」、「製造番号0271213」です。長らく事務局員や来賓の方への給茶や食事などに使用されてきたポットです。

 2025年7月15日に板橋区の水道水を、電気ポットの上限規定量である5リットルまでいれて沸騰をさせた後、3時間保温しました。電源を抜いた後、3時間冷ましたものを検査試料としました。

 検査対象のPFASは、PFOA, PFOS, PFHxS, N-MeFOSAA, PFDA, PFUnDAの7成分としました。試験方法については、「詳細」をクリックで表示します。

分析結果について

 PFAS7成分について検査を実施したところ、表1の結果となりました。

表1 2007年製象印マホービン製の電気ポットCD-PA50のPFAS7成分検査結果

ID 写真 サンプル名 PFOA PFNA 総PFHxS(直+分) 総PFOS(直+分) PFDeA PFUnDeA N-MeFOSAA PFOA+PFOS PFOA+PFOS+PFHxS+PFNA 米アカデミーズ7項目
1








2007年製

象印マホービン製

電気ポットCD-PA50

2.2 2.3 0.6 1.3 N.D. 痕跡 N.D. 3.5 6.4 6.6

※単位はng/L、N.D.はNot detected(検出せず)の略。痕跡は、定量下限以下で検出があったことを示します。

考察

  • ポットから採取した水から、PFOA2.2 ng/L, PFOS1.3 ng/L、PFHxS0.6 ng/L検出されました。この数字だけに着目をしますとポットに由来する検出のように見えますが、これまでの調査で、分析センターがある板橋区の水道水からは、通常、この検出値と同程度の濃度で、PFOA, PFOS, PFHxSが検出されることがわかっており、おそらく今回の検出の理由は、板橋区の水道水に由来すると考えられます(表2)。
  • 今回は、普段、農民運動全国連合会の事務局員がお茶を提供する時を再現する形を優先して、試験系を組みましたが、機会を改めて、超純水をポットに入れ、同様の試験をおこなった場合に、どのぐらいの数字になるのかを試してみたいところです。
  • PFOAの規制が始まる2021年より前の2007年に製造された電気ポットでしたので、ひょっとしたら水道水由来以上の検出が認められるのではないかという仮説を立てていましたが、結果はそうはなりませんでした。この理由は、1. 20年近い使用の間に、ポット内に含有されていたPFASがほぼ全て溶出してしまいなくなっていた、2. 2007年時点で、すでにメーカーさんらが自主規制に基づいて、PFOAなどではない別のフッ素樹脂に切り替えて製品を組み上げていた、などが考えられます。
  • 今回、検査対象にしたPFASはPFOA, PFOS, PFHxS, N-MeFOSAA, PFDA, PFUnDAの7成分でしたが、これ以外の短鎖のPFASなどが使用されていることが考えられます。資金的な支援が得られ、より多くの標準品を揃えることができれば、対象を広げた確認が取り組めそうです。
  • 今後、フライパンなどの調理器具、衣類なども対象に、身近な製品から、私たちの施設で検出が可能なPFASが検出されるかどうかを調べていきたいと思います。調査のためのご支援や情報などお寄せください。どうぞよろしくお願いいたします。

    表2 東京都板橋区の水道水とPFAS(2025年)農民連食品分析センター調査
    ID サンプル名 PFOA PFNA 総PFHxS(直+分) 総PFOS(直+分) PFDeA PFUnDeA N-MeFOSAA PFOA+PFOS PFOA+PFOS+PFHxS+PFNA 米アカデミーズ7項目
    P01

    板橋区大山のマンションで
    採取された水道水

    1.7 1.6 0.4 0.9 N.D. 0.2 N.D. 2.6 4.6 4.8

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