2023.10.2日公開
くまもとのたねと食を守る会さんらから、有機食材に食事を切り替えたら、尿中に検出されるネオニコチノイド系農薬は、減少するのか、調べられませんか、という相談をいただきました。この共同調査レポートは、くまもとのたねと食を守る会さんらが取り組んだ1週間有機食材に切り替えて暮らした8名と1ヶ月間有機食材に切り替えて暮らした2名から採取された尿の結果についてまとめたものです。
くまもとのタネと食を守る会さんらが、「身体にきゅん♡デトックスウィーク!」というプロジェクトを2022年9月実施しました。具体的には、モニターを募り、選ばれた方に、ムショ杖有機または農薬不使用の「野菜・米・調味料、水」を提供、これらを食べ続けることで、試験開始時と終了時に、尿中のネオニコチノイド系農薬がどのように変化するかを検証するというものでした。1週間のチャレンジをする方が8名、1ヶ月のチャレンジをする方が2名でした。
試験開始時と試験終了時に尿を採取、試験に使用しました。採尿のタイミングは、朝一番最初としました。
検出されたネオニコチノイド系農薬は、尿中クレアチニン濃度に基づく補正をおこないまいした。
採取された尿を分析試料として、ミニカラムなどを用いて精製処理をおこなった後、高速液体クロマトグラフタンデム質量分析計を用いた試験法で農薬成分の検出をしました。定性性と定量性を向上するため安定同位体標識付標準品を使用した試験法となっています。(詳細をクリックで続きを表示)
日本農薬工業会の作用機構分類にあるネオニコチノイド系農薬7成分と、近年、ネオニコチノイド系農薬に類似した用途や特徴をもつとされる農薬7成分を対象としています。内訳は以下の通りです。
ネオニコチノイド系殺虫剤7剤 | ジアミド系殺虫剤1剤 |
アセタミプリド | クロラントラニリプロール |
クロチアニジン | フェニルピラゾール系殺虫剤2剤 |
ジノテフラン | エチプロール |
イミダクロプリド | フィプロニル |
ニテンピラム | フロニカミド系殺虫剤1剤 |
チアクロプリド | フロニカミド |
チアメトキサム | ブテノライド系殺虫剤1剤 |
スルホキシイミン系殺虫剤(ネオニコ類似)1剤 | フルピラジフロン |
スルホキサフロル | |
メソイオン系殺虫剤(ネオニコ類似)1剤 | |
トリフルメゾピリム |
下図に示すように、スタート時は、全員からネオニコチノイド系農薬やネオニコ類似農薬が検出されました。チャレンジ1週間後は、1名を除く、全員でネオニコチノイド系農薬の検出値が減少していました。また1名は、全ての検出がありませんでいた。
1ヶ月の有機食材生活に参加したのは2名でしたが、下図に示すように、スタート時は、ネオニコチノイド系農薬やネオニコ類似農薬が検出されていましたが、1ヶ月後には、検出がゼロになった人もいました。
この調査の結果は、くまもとのタネと食を守る会さんで報告書を作成、販売しています。より詳しいデータや評価を読みたい方は、以下のURLからくまたね事務局さんにお問い合わせください。各被験者さんらの食卓事情なども含めた解析を知ることができるようです。また報告会をYoutube動画で見ることができます。
くまたね版デトックスプロジェクト:報告書分析センター調査レポート:北海道の農業従事者とその環境にすむ人達の尿中ネオニコチノイド系農薬調査
分析センター調査レポート:202検体の尿中ネオニコチノイド系農薬調査2021, 2022
分析センター調査レポート:北海道の農業従事者とその環境にすむ人達の尿中ネオニコチノイド系農薬調査
Aya Osaka et al., “Exposure characterization of three major insecticide lines in urine of young children in Japan—neonicotinoids, organophosphates, and pyrethroids,” Environmental Research 147, (2016): 89-96.
(日本の幼児の尿中の3つの主要な殺虫剤系統(ネオニコチノイド、有機リン酸塩、およびピレスロイド)の曝露特性)
Junko Kimura-Kuroda et al., “ENicotine-Like Effects of the Neonicotinoid Insecticides Acetamiprid and Imidacloprid on Cerebellar Neurons from Neonatal Rats,” PLOS ONE, (2012).
(新生児ラットの小脳ニューロンに対するネオニコチノイド系殺虫剤アセタミプリドとイミダクロプリドのニコチン様効果)
Jun Ueyama et al., “Temporal Levels of Urinary Neonicotinoid and Dialkylphosphate Concentrations in Japanese Women Between 1994 and 2011,” Environ. Sci. Technol. (2015), 49, 24, 14522–14528.
(1994年から2011年までの日本人女性における尿中ネオニコチノイドおよびリン酸ジアルキル濃度の時間的レベル)
Kazuhiro Sano1 et al., “TIn utero and Lactational Exposure to Acetamiprid Induces Abnormalities in Socio-Sexual and Anxiety-Related Behaviors of Male Mice,” Front. Neurosci., 03, (2016).
(アセタミプリドへの子宮内および授乳中の曝露は、雄マウスの社会的性的および不安関連行動に異常を誘発する)
ShujiOhno et al., “Quantitative elucidation of maternal-to-fetal transfer of neonicotinoid pesticide clothianidin and its metabolites in mice,” Toxicology Letters 322, (2020): 32-38.
(マウスにおけるネオニコチノイド系農薬クロチアニジンとその代謝物の母体から胎児への移行の定量的解明
)
TBS報道特集:Youtube:ネオニコ系農薬 人への影響は【報道特集】
分析センター調査レポート:市販玄米のネオニコチノイド系農薬残留調査2020
分析センター調査レポート:輸入ワインのネオニコチノイド系農薬など残留調査2018 1st
農林水産省:国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について
一社)アクト・ビヨンド・トラスト:ネオニコチノイド系農薬残留調査レポート(米・茶)2014
一財)岐阜県公衆衛生検査センター:岐阜県および地下水におけるネオニコチノイド系農薬の調査
PLOS ONE:LC-ESI/MS/MS analysis of neonicotinoids in urine of very low birth weight infants at birth(北海道大学のグループによるネオニコが母体から胎児に移行することを確認した論文)
PLOS ONE:LC-ESI/MS/MS analysis of neonicotinoids in urine of very low birth weight infants at birth(北海道大学のグループによるネオニコが母体から胎児に移行することを確認した論文)
ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議:ミツバチ・生態系・人間 - (PDF)
この検査は、日本に暮らす人の体からどのような農薬が検出されるかを調べる活動に取り組んでいるデトックス・プロジェクト・ジャパンさんと共同でおこなっているものです。デトックス・プロジェクト・ジャパンさんの申し込みページからお申し込み下さい。
ご事情や調査目的などで、デトックス・プロジェクト・ジャパンさんの検査プロジェクトを利用せず、直接での検査を希望される場合の依頼にも対応しております。この場合は、お手数ですが、農民連食品分析センターに直接お問い合わせください(電話03-5926-5131/power8@nouminren.ne.jp)。
農民連食品分析センターは、1996年に多くの農業者や消費者の募金により設立された背景を持つ世界的にも珍しい分析施設です。募金による設立のため、企業や行政などの影響を受けることなく、独立した立場で活動を行っています。
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