2026年5月、日本農業新聞は「農水省とアメリカ政府が、SPS協定に基づく生ジャガイモの完全解禁に向けた手続きを進めている」と報じました(リンク)。さらに9月の北海道新聞によれば、最大の課題とも言えるリスク評価作業が、9月にも完了すると伝えています。
これまで日本への生ジャガイモの輸入は、ポテトチップス原料に限定されてきました。この規制緩和がされれば、スーパーの店頭に袋詰めで並ぶジャガイモや外食の料理に使われるジャガイモまで利用が広がることが現実味を帯びてきます。
いま日本のジャガイモ生産と流通は大きな岐路にあるといえます。安易な輸入解禁は、封じ込め・防除に大変な困難と負担を伴うジャガイモシロシストセンチュウの侵入機会を増やすことに繋がります。また、その汚染が種芋の生産に影響を及ぼすようなことになれば、国産ジャガイモの生産基盤そのものを崩壊させかねません。
他にも輸入じゃがいもには、芽つぶし剤クロルプロファムやポストハーベストとして使用される殺菌剤の残留といった国産じゃがいもにはない課題も抱えています。
私たちは、日本のジャガイモ生産の根幹を揺るがしかねないこの問題への関心を広げ、実態を明らかにするため、輸入ジャガイモを原材料とするポテトチップスやフライドポテトなどの残留農薬調査に取り組みたいと考えています。調査費を募るクラウドファンディングへ、皆様のご支援をお願いいたします。
2026年5月、日本農業新聞は「農林水産省とアメリカ政府が、SPS協定に基づく生ジャガイモの完全解禁に向けた手続きを進めている」と報じました。また、その後の報道では、この手続きは9月に完了し、このまま進めば、数年後には、流通が始まる可能性があることも伝えられています。
多くの方は、気がついていなかったことではないかと思いますが、日本へ生のジャガイモの輸入は、長らく認められていませんでした。これは、アメリカ産をはじめ輸入の生のジャガイモには、ジャガイモシストセンチュウやジャガイモシロシストセンチュウといった害虫がいる恐れがあるからです。食料として欠かせないジャガイモを、こうした害虫の被害から守るため、生産者も行政機関も連携して、それこそ大変な取り組みを積み重ねてきた歴史がありました。
ところが、2006年、アメリカからの市場開放要求を受け入れる形で、ポテトチップス用途に限って輸入を認める緩和が行われました。さらにいま、このポテトチップスに限っていた制限をなくし、完全解禁が行われようとしているわけです。この緩和がなされれば、スーパーの店頭に袋詰めで並ぶ生食用ジャガイモや、肉じゃがなど家庭の食卓でおなじみの料理に使われるジャガイモにまで、輸入拡大が現実味を帯びてきます。これは、ジャガイモシロシストセンチュウの新たな侵入機会を与えることになりかねません。また、これまでとは変わって、管理の目の届かない流通が始まることでもあります。もし、ジャガイモシロシストセンチュウに汚染されたジャガイモが、検疫をかいくぐって流通し、それが、知らずに捨てられたり、栽培などされるようなことが起きれば、国内のじゃがいも生産に被害をもたらす恐れがあります。
アメリカ、アイダホ州で発生が確認された例があります。発生と被害の経緯がある国からの安易な輸入を認めることは、新たな侵入経路を作る機会になります。北海道は、日本の種芋の8割を担っています。もし、北海道への侵入や被害のまん延などを引き起こすようなことになれば、国産ジャガイモの生産基盤全体を崩壊させることにもなりかねません。
アメリカ産などのジャガイモからは共通して検出される農薬があります。除草剤「クロルプロファム」です。これはジャガイモの保管中に、芽が出ないよう芽つぶしをするポストハーベスト農薬(収穫後に散布される農薬。日本では原則認められていない使用方法。農薬ではなく食品添加物と定義替えすることで認めている)として広く使用されていることが知られています。
アメリカ農務省の市場調査では、アメリカのじゃがいもの90%以上からクロルプロファムが検出されたことが報告されているほどです(USDA, Pesticide Data Program, 2022-2024)。実際に、私たちの施設で行ってきた市場調査でも、アメリカなど輸入のジャガイモ原料を使用していると考えられる複数の製品から検出が認められています( リンク:ポテトチップスなどの残留農薬調査2025)。
日本のジャガイモ生産ではこのような使用は認められておらず、検出されることはありません。
クロルプロファムのほかにも、厚生労働省は、ポストハーベスト農薬として、防かびを狙った殺菌剤のアゾキシストロビン(2021年2月)、ジフェノコナゾール、フルジオキソニルの使用を認めてしまいました。これにともない、ジフェノコナゾールの基準値を、0.2 ppmから4 ppmと、輸入への配慮とも思われる大幅な基準緩和を行っています。
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)、高速液体クロマトグラフタンデム四重極質量分析計(LC-MS/MS)を併用し、およそ350成分ほどの残留農薬の検査を行います。特に、アメリカ産のジャガイモに高頻度で検出されることがわかっている芽つぶし剤「クロルプロファム」、それから保存性を上げるためにポストハーベスト農薬として使用が認められている殺菌剤の「アゾキシストロビン」、「ジフェノコナゾール」、「フルジオキソニル」については特に注視した検査を実施します。
また、現時点ではトライアルレベルでの展望で、実際に検出が可能かどうかは不明ですが、ポテトチップスなどの製品からジャガイモシロシストセンチュウが付着していたことをしめす痕跡が検出されないかを探るため、PCR法を使用したこれらの特異的遺伝子の検出試験も検討しています(募金がストレッチゴールに到達できればの目標です)。
輸入のジャガイモを使用していると考えられる製品を広く検査したいと考えています。ポテトチップス、スーパーのフリーザーで売られている冷凍フライドポテト、ハンバーガーショップのポテト、惣菜などで使われているポテトサラダなどを調べたいと考えています。 いただだいた募金は、検査商品の購入をはじめ、農薬検査に必要な試薬代、分析装置の稼働費用、人件費、資料作成費、廃棄物処分費用、交通費などに充当します。
農民連食品分析センター:ポテトチップスなどの残留農薬調査2025
NPC:Trump Administration Awards NPC Funding for Japan Exports(2026/4/24)
日本農業新聞:米国産生ジャガ輸入に懸念 JA北海道中央会会長(2026/8/19)
Yahooニュース:ジャガイモ輸入解禁、なぜ心配?(2026/8/19)
アメリカ農務省:Pesticide Data Program:PDF Database Search
有機農業ニュースクリップ:米国産ジャガイモ輸入規制緩和ポストハーベストも認めるNo.1051
@yonsankikaku:Youtube:じゃがいもの裏側…なぜカルビーだけ、米国産じゃがいもを使うの?
@yonsankikaku:Youtube:令和8年7月7日参院農林水産委員会の解説動画
じゃがいも製品に残留するクロロプロファムの調査1995, 横浜国大環境研紀要21,17-22(1995) PDF
農林水産省:Naupactus leucoloma (シロヘリクチブトゾウムシ)に関する病害虫リスクアナリシス報告書 PDF