805年、日本に茶が伝来し、日本茶の歴史が始まったといわれています。実際のところ、その時代では、貴士族の嗜好品に過ぎなかったようです。これが江戸時代に入り、いまでいう「煎茶」の製法技術が完成、そこからようやっと庶民の手に届くようになっていきます。そして今日では、緑茶は私達の生活に欠かせない飲料として流通されています。Green Teaとして世界にも知られる、日本の伝統的飲料の一つです。
日本を代表する伝統を重んじた飲料ではありますが、そんな緑茶にも1985年に大変革がやってきました。かつては誰もが急須を用い、楽しんでいた緑茶を、(株)伊藤園さんらが新技術に挑戦、「缶入り緑茶飲料」の開発と発売に成功(伊藤園:お茶百科:お茶の歴史日本に置けるお茶の飲料化)します。さらに、1990年には「ペットボトル入りの緑茶飲料」が完成、どこでも、飲みたいときにお茶が飲めるなどとして、日本の消費者に受け入れられ、成長していきます。キリンビバレッジの生茶が生まれると生産量は一気に増加、さらに、サントリーさんの伊右衛門の登場により緑茶飲料のシェアを盤石のものとなりました。このような緑茶飲料の市場規模は、毎年、右上がりの推移を示しており、食品業界の飲料部門としてはとても優良な製品として評価されています。
缶入り緑茶飲料がリリースされたころは、甘くない飲み物やそもそも緑茶お金を払って買うという感覚は、消費者にハードルがあったようですが、いまや完全に私たちの生活に定着し、コンビニエンスストアなどに足を運べば、迷うほど多くの銘柄が販売されるようになり、それらを選ぶ楽しみもできました。さらには、緑茶の持つ健康成分に着目し、保健、健康的な要素を加えた製品も増えつつあります。
ペットボトルにしてでもお茶が飲みたいと思うほどお茶好きの日本人だからこそ生まれてきた、新しいお茶文化の一つだともいえるでしょう。今日、私たちは、ペットボトル緑茶も急須で入れた緑茶も、「同じ緑茶」として受け入れ、飲むようになっています。
でも、両者には茶生産のことを考えたくなる違いがあることはあまり知られていません。ここでは、その違いと背景に触れられるショートレポートを紹介しています。
今回、市販のペットボトル入り緑茶飲料について、緑茶の美味しさの指標の一つである「うま味・甘み」成分について、ポストカラム誘導体化アミノ酸分析計を用いた比較調査をおこないました。大手メーカーさんによる製品には、「うま味・甘み」にどのような特徴があるのかを知ることができる調査です。
さらに、便利で手軽に飲むことができるペットボトル入り緑茶飲料と、急須で入れたお茶には、「うま味・甘み」にどのような違いがあるのかを見つめ直してみる比較試験も実施しました。
なお、緑茶の美味しさは、主に「苦味・渋味」と「うま味・甘み」のバランスで決まります(もちろん、他に香り、水色などもあります。またうま味・甘味成分が多くても、一方で苦味渋味成分が多ければ、それほどうま味や甘みを強く実感できないこともあります。2つのバランスは奥深いのです。)。「うま味・甘み」は、テアニンとグルタミン酸と呼ばれる成分が中心です。これらの成分が多ければ多いほど私たちの味覚は「うま味・甘み」を強く感じます。特に、テアニンの数値は、新茶や丹念に育て作られた緑茶、また高級な茶葉ほど高い数値を示す特徴があるとされています(図2)。緑茶飲料に含まれるテアニン含有量は、抽出の仕方だけでなく、使用した茶葉の使用量、品質、価格などをある程度反映してきます。あまり正確な表現ではありませんが、大雑把に言えば、テアニンが多い緑茶飲料は、よいお茶を贅沢に、丁寧に使用している、とみることもできるということです。
さて、みなさんがひいきにする製品中のテアニン、グルタミン酸含有量は、どんな傾向があるでしょう。以下の分析結果を見てみてください。
なお、「苦味・渋味」もお茶の美味しさにおいては重要な成分であり、今回の調査でも比較試験を実施したかったのですが、試験に必要となるカテキン類標準品が、大変高価なため、私たちの調査研究費ではとてもカバーできず、実施できていません。次回調査に向けて支援などをお願い致します。
*結果は本試料についてのみ有効で、製品全ての含有量を反映するものではありません。
図1 各製品ごとのグルタミン酸およびテアニン含有量比較
クラウドファンディングReadyforで、今回のお茶の調査のような市場調査を行うための支援資金をお願いしています。こちらのほうの支援もよろしくお願い致します。国産鶏卵の残留農薬分析をみんなの手でおこなおうというプロジェクトです。
1996年の設立以来、私たちの調査活動は、募金で運営されています。消費者や農民の立場に立った活動を続けていくためにも、みなさんからの支援が欠かせません。
調査をおこなうには、試薬や機器稼働のための資金が必要です。募金での支援もどうぞよろしくお願いいたします。
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