はじめに
2004年、市民団体「遺伝子組換え食品いらない!キャンペーン」さんより依頼をうけ、「遺伝子組換え大豆は使用していません」という旨の表示のある8製品(豆腐7製品、豆乳1製品)について、遺伝子組換え大豆の遺伝子を含有するかどうかについて共同調査を行いました。
調査及び試験方法について
- 2004年6月29日から6月30日までの期間、東京都、埼玉県内で購入された豆腐7検体、豆乳1検体を受け取り、分析依頼品としました。
- PCR法をもちい、検査方法はJAS遺伝子組換え食品検査マニュアルに準拠するよう設計しておこないました。おこないました。
- PCR法では大豆固有内在性遺伝子(Lectin)、組換え遺伝子(CaMV 35sPromoter)、組換え遺伝子(NOS Terminater)、組換え遺伝子(CTP4 from P.hybrida-CP4EPSPS間,GM大豆検出用)の増幅の有無を確認しました。
- 本結果は定量性を有さず組換え遺伝子の有無のみを検定した結果となります。
結果
以下に示すように、試験サンプル8検体のうち3検体にて組換え遺伝子を検出しました。
- 8検体中、豆腐3検体から遺伝子組換え大豆が使われているという結果が出ました。本結果は、定量性を持たない試験結果ですが、適切な制度運用が行われていると考えますと、組換え遺伝子が検出された製品は、原材料の遺伝子組換え混入率が5%未満のものを使用して製造されていると推測されます。
補足
- 現在日本における大豆の自給率は4%ほどで、96%を輸入に頼っています。輸入大豆の7割はアメリカからの輸入されるものですが、アメリカ産大豆の8割は遺伝子組換え大豆であるといわれています。
- 遺伝子組換え大豆にはMonsanto社の販売する除草剤Roundup(成分名:Glyphosate/グリホサート)に耐性を持つRoundup Ready(R) Soybeanが代表的です。
- 現在、各メーカーでは表示義務制度に基づき、製品に表示をおこなっていますが、JAS法では原材料となる作物がIPハンドリングなどにより管理されており、遺伝子組換え作物が(意図しない場合で)原材料の5%以下の混入であれば「遺伝子組換え不使用」と任意表示できます。表示についての実例は農林水産省の「遺伝子組換え食品に関する表示について」が、QAもあり、わかりやすいと思います。
- なお、ヨーロッパの表示規制制度は混入率0.9%と日本より厳しくなっているようですが、制度として運用はできているそうです。
- 大豆の用途はサラダ油などの原材料、豆腐、納豆、味噌、醤油などですが、遺伝子組換え食品表示制度によると表示義務があるのは「加工工程後も組みかえDNAまたはこれによって生じたタンパク質が残存するもの。ただし、重量比で5%以上の原材料で、上位3%までのもの。」とあります。表示義務がないものは「組みかえDNAまたはこれによって生じたタンパク質が加工工程後に除去・分解、食品中に残存しないもの」とあります。(このほか従来の作物と組成栄養価が著しく異なるものについても表示が必要です。例:高オレイン酸大豆)この規定に基づくと、大豆を使用した製品について、豆腐や油揚げ類、おからや、納豆、豆乳、みそ、きなこ、大豆たんぱく、大豆もやしなどの製品では、DNAやタンパク質が残存していますので、表示が必要になります。n-ヘキサン法で製造される大豆油や機械速醸法など微生物の働きが強く作用して作られる醤油ではDNAやタンパク質が除去・分解されるため表示が不要となります。
- 非組換え品とそうでないものを選ぼうと考える消費者は、商品にある表示をもとに判断するしかありません、本来そのための表示制度であることから混入率に関するよりわかりやすい表示や情報提供を進めていく必要が不可欠だと思います。かなりの消費者が「遺伝子組換え不使用」の表示は混入率0%であると認識しているようです。遺伝子組換え食品を食べたくないと願う消費者にとって、現在の制度は正しい理解と情報提供が達成できているとはいえない状況だと思われます。
- この点を踏まえ、現行の制度に問題ないと考え運用するのであれば、浸透の進んでいない現行の制度の理解を進めるべく、今後しかるべき機関が定期的に定量性のある調査をおこない、その結果を消費者や製造者に届け、現状の遺伝子組換え表示制度について十分な情報公開が必要であると考えます。また、その結果、消費者や製造者が現制度に対して、改正などのフィードバックがなされるところまでを期待したいところです。
- 製造者にとっても高いコストと苦労を費やして、IPハンドリングをおこなった原材料を購入しているにもかかわらず、こうした問題が起きていることは大変な迷惑であるといえます。またコストが同等であれば非遺伝子組換え品を使いたいと考える製造者も多くその苦労はかなりのものであると聞いています。遺伝子組換え作物のよりしっかりとした分別管理がおこなわれるようになっていって欲しいと考えます。
従来の作物と組成栄養価が同等のもの
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義務表示
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表示不要
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加工工程後も組みかえDNAまたはこれによって生じたタンパク質が残存するもの。ただし、重量比で5%以上の原材料で、上位3%までのもの。 |
組みかえDNAまたはこれによって生じたタンパク質が加工工程後に除去・分解、食品中に残存しないもの |
大豆(枝豆、大豆もやしを含む)
- 豆腐/油揚げ類/凍豆腐、おから、ゆば/納豆/豆乳類味噌/大豆煮豆/大豆缶詰/大豆瓶詰/きな粉/大豆炒り豆
- 上記を主な原材料とするもの
- 大豆(調理用)を主な原材料とするもの
- 大豆粉を主な原材料とするもの
- 大豆タンパクを主な原材料とするもの
- 枝豆を主な原材料とするもの
- 大豆もやしを主な原材料とするもの
トウモロコシ
- コーンスナック菓子/コーンスターチ/ポップコーン/冷凍トウモロコシ/トウモロコシ缶詰・トウモロコシ瓶詰
- 上記を主な原材料にするもの
- コーンフラワーを主な原材料とするもの
- コーングリッツを主な原材料とするもの(コンフレークを除く)
- トウモロコシ(調理用)を主な原材料とするもの
ジャガイモ(2003年から実施)
- 冷凍ジャガイモ/乾燥ジャガイモ/ジャガイモでんぷん/ポテトスナック菓子
- 上記を主な原材料にするもの
- ジャガイモ(調理用)を主な原材料とするもの
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大豆
トウモロコシ
- コーンフレーク/水飴異性化液糖/デキストリン/コーン油
なたね
綿(ワタ)
ビールなどの酒類 |
従来の作物と組成栄養価が著しく異なるもの
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義務表示
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高オレイン酸大豆(脱脂により高オレイン酸形質がなくなったものを除く) |
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より詳しく情報を知りたいときは
まず以下までお電話をください。
農民連食品分析センター
TEL:03-5926-5131
FAX:03-3959-5660
Email power8@nouminren.ne.jp