>03年09月16日加筆修正


 2003年は大変な冷夏で、農作物等にたくさんの影響を及ぼしました。お米も例外ではなく、東北をはじめとした産地では作況100を下回る地域が多い状況となりました。

 多くの方々が「こうした年は、新米と偽って、古米を混ぜて売ったりするんじゃないか。」、「国産米と偽って、輸入米を混ぜて売ったりするんじゃないか。」と考え始めているようです。

 残念ながら輸入米と国産米を見分ける方法はまだまだ先の技術で、この問題を実験的に調査をすることは出来ませんが、お米が古米か新米かについてはある程度の視点で調査をすることが出来ます。

 弊センターで毎年、調査をおこなって見ると、100%新米とかかれた米から明らかに鮮度の低下したお米が見つかったりしました。

 古米といっても、実際のところ、現在は保管倉庫の技術がとても高くなっていて、1年以上前のお米であっても、こうした倉庫で玄米のまま保存されていると、あまり鮮度が落ちることがないため、精米をすれば、新米と同等の鮮度を示すことがおおくなっています。

 そもそも、古米はいつから古米なのかという疑問があるわけですが、いろいろな考え方があります。一つは行政の区分に基づくもので、11月を始めにする米穀年度で1年たった米を古米と呼びます。ほかには、お米にもっともストレスがかかる梅雨を境に古米と呼び分けたり、次の年のお米がとれるまで古米と呼んだりとそれぞれの目的によって考え方が異なっています。

 こうした理由から、今日、古米、新米という区別はしにくくなっていますが、単純に鮮度がよいか悪いかという調査をすることはできます。あるお米を調べたときに鮮度の良いお米の中に、明らかに鮮度の劣るお米が入っているのを確認することが出来れば、新米、古米という判定ではないものの、鮮度の異なるお米を故意に混ぜているかどうかを判定することは十分出来ます。このページでは弊センターでお配りしている「鮮度簡易判定キット」で判定をする際の、それぞれの試薬の特徴とクセについてすこしふれてみたいと思います。

判定方法について

 一般に米の鮮度を簡易に評価する場合、(1)発芽率を調べる(2)脂肪酸の生成量を測定する(3)グアヤコールを用いた酵素活性を調べる(4)米のpHを測定する、等の方法があります。弊センターの「米の鮮度簡易判定キット」は上の(3)と(4)を利用した方法です。

pH法
グアヤコール法

 それぞれ方法には利点と欠点がありますが、消費者の方にわかりやすいのはpH法による判定です。

pH法

 pH法はお米の中に酸がどのぐらいあるのかを調べることで、鮮度を評価する方法です。このキットはどんなお米でも検査をすることが出来ますが、特に精白米を検査するのにむいています(ビタミンB強化米は不可)。

 お米には精白米で約1%の脂質が含まれていますが、脂質は古くなると酸化して、脂肪酸とグリセリンに分解してしまいます。pH法はこの脂肪酸の生成による酸度を調べることで、鮮度が劣っているかどうかを判定するものです。

 新米や精米したての場合は、お米には脂肪酸はほとんどありませんので、中性から弱アルカリ性です。だんだん時間が経ち鮮度が落ちるにつれ、脂肪酸が増加し、酸性になっていきます。

 キットはpH指示薬のブロモチモールブルーとメチルレッドを混合後、調整したものです。反応はお米が新しいと青色から緑色、古くなるにつれ、黄色から赤色を呈します。詳しくない人でも判定しやすいです。試薬をくわえて5分程度で判定が出来ます。

精白米
鮮度の良いお米
鮮度の悪いお米
混入米
新米や保存状態の良いお米は青から緑色。鮮度が低下するほど黄色みを帯びていきます。
古米や保存状態の悪いお米は赤色。
鮮度の良いお米に鮮度の劣るお米を混ぜると上のように反応します。(テストの際のコツは、試薬をくわえ、良く染み渡らせた後は、もう振らないことです)

グアヤコール法

 グアヤコール法はお米のなかの酵素「パーオキシダーゼ」の活性を調べるものです。酵素は、時間が経つと活性を失ってしまうので、鮮度の落ちたお米ではこの試薬と反応が起きません。酵素は糠の部分や胚芽の部分に含まれていますので、玄米向けの判定法になります。

 パーオキシダーゼ活性の高いお米、つまり鮮度の良いお米は、判定液B(過酸化水素水)を分解するため、判定液A(グアヤコール)と反応して、テトラグアヤコールを生成し、糠や胚芽部分が赤色に染まりるという仕組みです。

 精白米に使う場合は胚芽(またはその欠片)や糠が、すこし残っていないと正しい判定が出来ません。また精米歩合が高いと胚芽部分はきれいに欠落していますので、新米でも古米の反応を示すことになりますので注意が必要です。試薬をくわえて5分ぐらいで判定が出来ます。

精白米
左:鮮度の良い精白米 右:鮮度の悪い精白米
新米や保存状態の良いお米は胚芽部分が赤色に染まります。古米や鮮度の低下したお米は胚芽部分が染まりません。 注)精白米の場合、精白歩合によって胚芽欠落していたり、お米がかけていると酵素を含む部分がなくなっているため、正しい判定が出来ません。

■判定法による違い

 以下に、それぞれの試薬による反応の違いを映した写真を載せておきますので、参考にして使ってください。一番右の列「改良グアヤコール法」は、グアヤコール法の改良法として、上記試薬にくわえ、p-フェニレンジアミンを添加し、黒紫色の着色をさせるものです。鮮度の良いお米の場合、グアヤコール法同様、糠および胚芽の部分が染まります。この方法は感度が高く、色がはっきりと見分けられるので、判定しやすいですが、単純グアヤコール法より、鮮度が良い判定になることが多いです。

クリックで拡大します。カメラ(旧式)が白に弱いので、色がわかりにくいものもあります。2003年産米の写真がありませんが、後日掲載予定でいます。いずれのお米も常温保存品です。

米の種類
pH法
グアヤコール法
改良グアヤ法
備考
2001産宮城ひとめぼれ無洗米
鮮度低下。さらに鮮度低下米の混入有りまだら
胚芽部分が赤く染まった米はほとんどない。
胚芽部分が黒く染まった米はほとんどない。
糠、胚芽がきれいになくなる無洗米ではグアヤコール法で判定しにくくなりますが、pH法では鮮度の低下が確認できます。着色具合から
2002産秋田あきたこまち精白米 (2003年8月24日精米)
去年のお米でも、玄米保存では、精米すると新米同様の反応になります。みじかい反応時間で改良グアヤコール法では米が全体的に染まってきています。
2002産京都キヌヒカリ玄米

(常温保存品)

pH法では赤が強く鮮度の低下を確認できます。グアヤコール法でも着色米が少なく同様の結果と判断できますが、改良グアヤコール法では着色米の数が多く、やや鮮度が良い結果となっています。
2002産中国緑色大米 精白米 (精米日不明)サンプル収納段ボールから発見

試験日2003年9月12日

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一般社団法人 農民連食品分析センター
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