令和6、7年と米価格の高騰と供給バランスの悪化が令和米騒動と呼ばれる状況を引き起こしています。こうした中、高値が続く国産米に代わる流通の選択肢として、アメリカ産米などの輸入米の流通が過熱、スーパーやディスカウントストアなどの小売店に並ぶ機会が増えてきています。
輸入米の流通は、これまでにも日本のお米市場の開放を目指した政策や経済的成功を狙って進められてきました。その流通にあたっては、単に国内自給率や稲作経営が影響を受ける可能性があるという視点ではなく、安全性や品質について心配がされてきた歴史があります。農民連食品分析センターでは、これまでにも、こうした声に情報を提供するため、輸入米の残留農薬調査などを実施、その実態を確かめる調査をおこなってきました。
令和の米騒動にあるなかで、「輸入米が増えているけれど、残留農薬はだいじょうぶなの?ポストハーベストや防腐処理などされたりしていないの?」といった声が寄せられています。そこで、市販の輸入米について残留農薬検査を実施しました。このショートレポートは、調査の第一報となります。
2025年5月から7月にかけて、市販の輸入米5製品を購入し、残留農薬一斉分析354成分検査を実施しました。検査対象とした農薬成分はリストをご参考下さい。
5製品はいずれも複数原料米で、産年の表記はありませんでした。輸入時期は、記載の無い1製品を除き、2月以降に輸入されたものでした。2025年原料米の輸出国は、アメリカ、ベトナム、台湾の3カ国です。
検査法についての詳細は、各検査法のページをご確認ください。
5製品を検査したところ、3製品から農薬の検出が認められました。食品衛生法に定められる残留基準値を超過したものはありませんでした。結果は以下の通りです。検出された農薬の検出濃度の単位はppmです。
表1 輸入米の残留農薬調査結果 2025年第一報

1993年には、冷害による大凶作でタイ米などの緊急輸入が行われた平成の米騒動がありました。この米騒動を挟む形で、1986年から1994年まで、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉が進められ、日本は農産物市場の開放と舵を切ることになります。さらに、1995年には、WTO国際協定加盟へと時代は進み、輸入米は、ミニマムアクセス米という形を皮切りとして、米不足とは異なる形で、私たちの食卓に登るようになってきました。
輸入米の安全性について関心が高まる中、農民連新聞(現、農民運動全国連合会機関誌の新聞農民)の1991年3月5日号の記事には、日本子孫基金(現、食品と暮らしの安全)さんらが、アメリカで販売されている米について、横浜国立大学・環境課化学研究センターと厚生省指定検査機関(おそらく日本食品分析センターではないか)に、残留農薬検査を依頼し、アメリカ産の米から有機リン系のマラチオンが、0.19 ppmで検出したことを報道しています(右写真)。また、日本子孫基金では、この時、タッパーにアメリカ産米をいれ、コクゾウムシを放ち、その生存数や忌避行動を確かめるという実験も行っていて、4日後には、2割が死亡したという報告は話題となりました。
農民連食品分析センターは、1996年に多くの農業者や消費者の募金により設立された背景を持つ世界的にも珍しい分析施設です。募金による設立のため、企業や行政などの影響を受けることなく、独立した立場で活動を行っています。
1996年の設立以来、私たちの調査活動は、募金で運営されています。正直なところ、私たちの活動に必要な財政は厳しいところにあります。消費者や農民の立場に立った活動を続けていくためにも、みなさんからの支援が欠かせません。
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