2017年7月、オランダの養鶏場で、殺虫剤フィプロニル(fipronil)が、違法使用され、EUで流通される鶏卵、鶏肉の大規模なフィプロニル汚染事件が発覚しました。養鶏場で殺虫などの駆除を引き受けていたオランダの業者が、養鶏場での使用は認められていないフィプロニルを、こっそり使用したことが原因とされています。この汚染事件によって、1000万個を超える鶏卵が廃棄になり、散布を行った業者2名が逮捕されました。
いくつかのメディアや厚生労働省がまとめた資料によると、今回検出されたフィプロニルの濃度は、0.003〜1.2ppmと報告されています。
また、韓国でも汚染鶏卵が見つかり、養鶏場におけるフィプロニルの使用実態などが把握されるまで、全養鶏場からの出荷を禁止するという措置が取られるなど、事件の影響は世界各地に広がりました。
鶏舎にはワクモなどに代表されるダニが発生します。これらのダニの管理が不十分な鶏舎では、爆発的な発生を招いたりすることもあり、鶏舎での作業者がトラウマになるような光景になることもあるそうです。ダニ類の大量発生は、産卵率の低下を引き起こすため、経営的にも適切な管理が求められます。一般的には、定期的な薬剤による駆除を行うことで対策が取られています。今回、検出されたフィプロニルは、家庭用殺虫剤やペット用殺虫剤などとして普及している成分ですが、浸透性や拡散性といったメリットから、オランダの業者は「秘密の薬剤」といった売り込み文句を掲げ、手を焼く鶏舎の殺虫処理にこっそりと使用していたということのようです。
厚生労働省によれば、2017年8月15日時点で、EUおよび韓国から汚染鶏卵の輸入実績は存在しないこと、を照会済みだとのことです。さらに、現在は、EU及び台湾から輸入される鶏卵とその加工品(粉卵、液卵および皮蛋に限る)は、全届けに対して、フィプロニルのモニタリング検査の対象として対応しているとのことです。
厚生労働省:EU(欧州連合)等における鶏卵のフィプロニル汚染に関する Q&A(PDF)
厚生労働省:「平成 29 年度輸入食品等モニタリング計画」の実施について (鶏卵のフィプロニル)
さて、不適切な使用がおこなわれた国々から、事件の影響を受けた鶏卵などの輸入がなかったことはわかりましたが、日本国内側の状況はどうなのでしょうか。農薬取締法において、フィプロニルは、2017年8月13日現在、フィプロニルを含む65製品の登録が確認できます。適用作物は、主にイネやさつまいも、さとうきびなどとなっており、鶏卵生産の現場でできるものはありません。農薬取締法にのっとり、適切な養鶏がなされていれば、国産の鶏卵や鶏卵加工製品、鶏肉などから検出される可能性はないとはいえるでしょう。
そこで、市場に流通している国産鶏卵の残留農薬の実態を探る目的で、フィプロニルを含む農薬378成分について調査を実施しました。私たちの調査対応が可能な範囲では、国内の生産者、販売者などを広く反映すると判断できるサンプルとサンプル量の確保には限界がありますが、今回、第1回目として、近隣の販売店から購入ができた8製品についての結果を得ましたので、ショートレポートとして公開をしておきます。
表1に示すように、8製品16試料で残留農薬を検出したものはありませんでした。
*結果は本試料についてのみ有効で、製品全てを保証するものではありません。
BBC:Egg scandal: 20 tonnes sold in Denmark, food agency says
the hankyoreh:[社説]殺虫剤鶏卵パニック、「工場式密集飼育」変えるとき
厚生労働省:EU(欧州連合)等における鶏卵のフィプロニル汚染に関する Q&A(PDF)
厚生労働省:「平成 29 年度輸入食品等モニタリング計画」の実施について (鶏卵のフィプロニル)
食品安全委員会:府食第212号別添1:厚生労働省農薬・動物医薬品評価書「フィプロニル」(第2版)
市販鶏卵の残留農薬調査その2を計画しています。今回、対象にできたのは板橋区大山周辺で購入することができた8商品だけでした。私たちは、もっとたくさんのデータを集め、これからも安全で安心な国産鶏卵を届け、食べられる、そんな未来に繋げていくための情報を増やしたいと考えています。それには、調査研究費と、より広範な地域からサンプルを集める必要があります。
今回、第2回の調査研究費とサンプル収集の支援をクラウドファンディング「Readyfor」でおこなうことにしました。支援期間は2017年10月23日から2017年12月15日までとしています。
調査にあたってみなさまのお力をお借りできればと考えています。クラウドファンディングでの募金が難しいという方は、従来通りの募金をお願いできればと思います。その際は、通信欄に「鶏卵調査」とお書き下さい。
この調査は、問題のある鶏卵や業者をあぶり出そうというものではありません。日本の鶏卵生産に関わる生産者の苦労は大変なものです。厳しい情勢の中でも、苦労を積み重ね生産していることを私たちは知っています。これからも安全で安心な国産鶏卵を届け、食べられる、そんな未来に繋げていくための、データづくりにお力をお貸し下さい。
1996年の設立以来、私たちの調査活動は、募金で運営されています。消費者や農民の立場に立った活動を続けていくためにも、みなさんからの支援が欠かせません。
残留農薬調査をおこなうには、試薬や機器稼働のための資金が必要です。募金での支援もどうぞよろしくお願いいたします。
まず以下までお電話をください。
農民連食品分析センター
TEL:03-5926-5131
FAX:03-3959-5660
Email power8@nouminren.ne.jp