グリホサートは、植物の種類を選ばず、高い除草効果が得られる除草剤成分です。入手も容易なうえ、農薬になれていない人でも取り扱いがしやすいことから、農用地の管理だけでなく、駐車場や空き地の管理、道路脇や庭の除草などに広く使用されています。一方、安易な散布によって「飛散」、「漏出」、「いたずら」などが起き、近隣の田畑の農産物が枯れてしまった、お隣の植木や植物などに被害がでてしまった、などのケースも起きることがあるようです。
最近、こういった相談をいただくことが増えています。そこで、意図的なグリホサート散布による影響を受けたと考えられる場所の土壌や植物体などについて、グリホサートの残留を確認する試験コースを用意しました。
この試験では、除草剤成分「グリホサート」について検出を行います。定量下限は、0.01 mg/kgとなります。なお、検査試料に汚れなど、分析の妨害になる成分が多く含まれる試料の場合では、定量下限の到達が難しいことがあります。
試料について抽出、精製処理をおこなった後、高速液体クロマトグラフタンデム質量分析計による検出をおこないます。同位体標識付標準品が存在する成分については、同位体標識付標準品を使用し、定性と定量を行います。(詳細をクリックで続きを表示)
2021年、近隣の緑地で植物の枯れが確認された。除草剤が散布されたのかもしれない、という相談を受け、被害発生場所の土壌について試験を実施した。
試料ID | 試料名 | 分析結果(mg/kg) |
1 | 土壌 | グリホサート 0.03 |
2020年8月、道路沿いの水稲に生育障害が発生。同年6月頃、水田に面する道路ののり面を管理業者がグリホサートを使用して除草作業を行っていたことが判明。これが飛散して、影響を与えたのではないか、という内容での相談をうけ、生育障害が認められる水稲の稲穂(植物試料)について、試験を実施した。結果、複数の試料から、グリホサートの残留が確認された。
試料ID | 試料名 | 分析結果 (mg/kg) |
1 | 稲穂A | グリホサート 0.02 |
2 | 稲穂B | グリホサート 痕跡 |
3 | 稲穂C | 検出せず |
4 | 稲穂D | グリホサート 0.01 |
5 | 稲穂E | グリホサート 痕跡 |
6 | 稲穂F | グリホサート 痕跡 |
7 | 稲穂G | グリホサート 痕跡 |
グリホサートは、世界で最も出荷量が多い除草剤ですが、グリホサート以外にも数多くの除草剤が存在します。単に植物が枯れた、という状況が発生した場合、必ずしもグリホサートが原因成分ではないこともあります。この検査コースは、「グリホサートのみ」を対象にした検査ですが、グリホサート以外の除草剤も検査したい場合は、その他の検査コースを組み合わせる必要があります。詳細については、各検査紹介ページをご覧いただくか、お電話などでお気軽にお問い合わせください(メール / 電話03-5926-5131)。
A 03-5926-5131までお電話ください。打ち合わせなしで、試料を送られた場合は、検査ができないことがあります。お打ち合わせ後、分析依頼書(リンク)に必要事項を書き、メールまたはFAX(03-3959-5660)にてご送付ください。サンプル発送の際は、忘れずに分析依頼書を同封してください。
A 検査には、原則、土壌や植物体の場合、200g以上を目安に送っていただく形になります。サンプルが少量で確保が難しい場合は、ご相談下さい。試料の種類によっては、調整が可能な場合があります。
A 木の枝などの試料は、原則、チップ化したものでお願い致します。枝のままでは試験作業が困難なため、ご協力をお願い致します。チップ化などの処理が難しい場合は、必ず事前に、ご相談ください。
A 検査対象農薬に汚染されていないきれいなボトルやポリ袋を用意してください。漏れたりしないものである必要があります。土壌や植物などの場合は、厚手のチャックつき袋で大丈夫です。なお、採取ボトルをこちらでお手配することも可能です(有料)。ご希望の場合は、事前にお問い合わせください。
A 採取後は、速やかに分析センターまでお送りください。すぐに発送ができない場合は、冷蔵庫等で低温保管をしてください。夏場などの気温が高い季節は、冷蔵便での発送をお勧めします。なお、荷物発送の際は、午前中着指定、土、日は避けたスケジュールでお願い致します。
A この試験はグリホサートが原因だと断定する試験ではありません。枯れる原因はグリホサート以外の除草剤、水分不足、高温など環境的要因も想定する必要があります。
非営利の市民団体、教育機関、研究機関の場合、その目的によっては、特別な価格での試験対応をおこなうことがあります。私どもの施設は、限られた資金で運営されているため、すべてのご相談ついてご対応することは難しいですが、計画している調査プロジェクトの目的や規模、予算などをお知らせ下さい。
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