2024年、秋田県が開発した「あきたこまちR」の流通が始まっています。あきたこまちRは、イネのカドミウムやマンガンなど重金属の輸送に関わるOsNramp5遺伝子に1塩基の欠損をさせた遺伝子型をもっており、この欠損によってカドミウムの吸収を抑えるようにした品種です。OsNramp5遺伝子の働きが解明されてから、この配列を重イオンビーム照射法により欠損させる研究が行われ作出された「コシヒカリ環1 号」を親として秋田県農業試験場が育種しました。
カドミウムがわたしたちの体に与える危害性は明かであり、その含有量が少ないコメを生産、食べる仕組みを作るという目的は理解できます。一方で、この手法により育種される品種の流通にあたっては、「あきたこまち」も「あきたこまちR」も、品質、食味など実質的同等であるとして、販売されることになっており、この2つを認識できるような表示の仕組みは設けられていないことから、技術的課題と種苗の権利などを心配する消費者にとっては、選ぶことができないという課題があることが指摘されています。
2025年(令和7年)の作付からは、種苗供給の段階で、秋田県産のあきたこまちの大部分があきたこまちRとして栽培が取り組まれている状況にあることが発信されています。そこで、農民連食品分析センターでは、実際に市場に流通しているあきたこまちがあきたこまちRであるかどうか、また秋田県外で生産されるあきたこまちはどういった状況なのかを探るため、PCR法を使用した調査に取り組みました。
2026年5月から6月にかけて、スーパーマーケットで、「あきたこまち」と表示された国内産精米3製品を購入し、SNP判別マーカーを利用したPCR法による品種判定試験を実施しました。
判定には、農研機構が公開している「コシヒカリ環1号の判別マーカーによるハイスループットなDNAマーカー選抜実験プロトコールver2.0」に記載のプライマー対を使用しました(農研機構プロトコールページ)。DNA抽出にはビジョンバイオお米鑑定団付属の抽出キットを用いました。コメ陽性対照配列プライマー対との同時増幅を行い、増幅パターンによって判定しました。
判定に使用したプライマー対
Fwdprimer(共通)CCTGTACGAGAGCGGGTTC
Rev primer1(一般品種用)TTTATATTATTATTTATATTATTATTATATTCGAGGCTGAGGTTGGC
Rev primer2(環1号用)CACTCGAGGCTGAGGTTGCG
このプライマーは、コシヒカリ環1 号に由来するOsNramp5配列(カドミウム低吸収型・1塩基欠損型)の検出をおこなうものです。この配列を持っている場合、137bpの増幅断片が、持っていない場合は、164bpの増幅断片が得られます。お米が混ざっている場合や交雑している場合などでは、両方の増幅断片が得られます。
コシヒカリ環1号を親とするあきたこまちRもOsNramp5配列(カドミウム低吸収型・1塩基欠損型)をもっていることから、このプライマーを使用することで、137bpの増幅断片が検出された場合を「あきたこまちRと判定」、164bpの増幅断片が検出された場合を「従来型あきたこまちと判定」としました。
結果は以下の通りです。検査を行った3製品のうち、1製品(秋田県産)からあきたこまちRと判定される増幅パターンが確認されました。
検査した3製品のうち、秋田県産のあきたこまち1製品が「あきたこまちR」と判定されました。残る岩手県産、茨城県産の2製品は従来型あきたこまちと判定されました。
あきたこまちRは2024年から秋田県を中心に流通が始まっており、今回の結果は、秋田県産を産地とするあきたこまちは、秋田県が発信しているとおり、あきたこまちRへの切り替えが進められていることを示すものとなりました。一方、他産地のあきたこまちとして販売されている製品は、今回の結果では従来型であることが確認されました。調査サンプルが少ないため、評価するには十分ではありませんが、一定、今回の結果から推察されるのは、秋田県外では、まだ、あきたこまちR の種苗は普及していないという栽培実態であるとみられそうです。
現在、あきたこまちRは、店頭で表示はされていません。今回検査した秋田県産製品の商品パッケージにも、あきたこまちRであることを示す表示はありませんでした。 表示の仕組みがない現在、あきたこまちRの購入を避けたいという方は、秋田県以外のあきたこまちを購入するという選択肢があるともいえる結果となりました。
農民連食品分析センターでは、今後も市販あきたこまち製品の調査を行い、流通状況の把握に努めていきます。調査研究費用の支援をよろしくお願いいたします(オンライン募金のページに移動)。
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