はじめに
福島第一原発事故により放出された放射性セシウムは、広く日本の各地に拡散をしました。東京都内を走るバイクのエアフィルターにはどのぐらい放射性セシウムが吸着されるのでしょうか。分析センター職員が通勤時に利用しているバイクに装着されているエアフィルターに付着する放射性セシウムについて測定を行い、東京都における居住環境汚染の簡易指標としての検討を行いました。
試験方法について
- バイクからエアフィルターを取り外し、ビニール袋に入れた。これに洗剤(シカクリーンLX3原液)20mlを添加したあと、蒸留水1.18Lを3回に分けていれ、もみ洗いを実施した。もみ洗いの都度、得られた洗浄液を回収し、一つに合わせたものを分析試料とした。
- 測定にはゲルマニウム半導体検出器(CANBERRA社製GC2020)を用い、定量はLabSOCSによる効率校正を使用した。
- テストに使用したエアフィルターは、2012年の8月中旬に洗浄済みのものを利用し、走行を開始した。
- 第1回目の測定は2012年8月中旬から2012年12月17日までの約4ヶ月間、走行距離でおよそ3000km程度の走行を行ったものを試験に供した。
- 第2回目の測定は2012年12月17日から2013年6月17日までの約6ヶ月間、走行距離でおよそ3000km程度の走行を行ったものを試験に供した。
- 走行区間は、足立区東保木間周辺から板橋区熊野町までの環状七号線を中心とした往復30km。
- 2012年、この車両は遺伝子組換えナタネ調査隊に使用していない。通勤以外での走行はあるが、汚染レベルが東京より極端に高い地域への移動はおこなっていない。
- バイクは250ccの単気筒DOHCエンジン(スズキDR250R(1995))、年式なりのへたりがある車両(走行距離10万キロ程度)。エンジンにはPAMチューンが施されており、給気量がやや多いセッティングでの走行を反映した付着物量と考えられます。
結果-試験液中の放射性セシウム濃度-
以下に示すように、放射性セシウムの付着が確認された。
フィルター使用期間 |
期間 |
Cs-137
(Bq/kg) |
Cs-134
(Bq/kg) |
検出限界Cs-137 |
検出限界Cs-134 |
走行距離 |
2012年8月中旬〜12月17日 |
4ヶ月 |
19.0 |
11.8 |
1.7 |
1.4 |
およそ3000km |
2012年12月17日〜2013年6月17日 |
6ヶ月 |
2.7 |
1.4 |
0.3 |
0.2 |
およそ3000km |
表1 試験液中の放射性セシウム濃度
考察
- 放射性セシウム134と137の比率が福島第一原発事故で放出されたときから減衰計算される比率と一致することから、今回の事故により放出された放射性セシウムが付着したものであると推測されます(減衰とCs134/137比率表:Excel形式)
- 1回目の結果より、2回目の結果が数値が低くなっている原因は、事故により降下した放射性セシウムが環境中に沈着し、飛散しなくなったことにより、道路を走行するバイクに吸着される量が減ったか、単に季節や天候、道路の清掃による変動などが考えられます。
- より複数のデータを採取し、居住環境の汚染指標としての利用を考えたいところですが、本車両に乗るスタッフが住居を移転したため、同環境と条件での調査が困難になり、今後、改めて条件設定をしたデータ採取が必要となります。
調査サンプルをお送りください
- 一般の方や業務用車両を利用されている方、お使いの車両のエアフィルターを調査用サンプルとしてお送りください。こちらへお送りになる際の、送料はご負担ください。
- お送りになる前に、こちらにお電話かメール、FAXなどをいただけますと助かります。
- バイク、車、農耕車などエアフィルターがついている機械を広く対象としています。ただし、なるべく走行ルートや走行期間、距離などが履歴として記録できるものをお願いします。
- 調査支援金として1件500円以上のご支援金を、現金、図書券や切手、電子マネーなどでいただけますと調査活動が維持でき助かります。支援金の支出が難しい場合は気軽にお申し出ください。
- なお、ペーパー式のフィルターの場合は、粉砕してしまいますので、ご返送はできません。スポンジ式フィルターの場合は、こちらで洗浄処理し、試験が終了した後、ご返送することが可能です(この場合の返送料はこちらで負担します。)
- 測定にはゲルマニウム半導体検出器(CANBERRA社製GC2020)を用い、定量はLabSOCSによる効率校正で実施します。
- 測定データは、農民連食品分析センターで整理し、公開していきたいと考えています。お送りいただいた方の個人情報などは、公開や利用などはしません。データの重要性からどうしても必要になるような場合などには、ご連絡を差し上げます。
より詳しく情報を知りたいときは
まず以下までお電話をください。
農民連食品分析センター
TEL:03-5926-5131
FAX:03-3959-5660
Email power8@nouminren.ne.jp