はじめに
1997年3月から4月、市販される有機認証表示のある大豆製品について残留農薬調査を実施しました。
日本の有機認証制度は、2000年に制定される有機JAS認証制度が運用されるまで、存在していませんでした。一方、海外では日本より早い時期から進められており、そうした認証を受けた不安が多いとされる輸入農産物の、安全性と付加価値を保証する指標とされていました。しかし、今回の調査では、認証を受けているにもかかわらず、残留農薬が検出される製品が存在することが確認され、表示の信頼性に問題があることが示されました。
- 東京・池袋のスーパーマーケットで販売されていた有機認証付きの製品を購入し、分析試料としました。
- 大豆については、都内の業者からOCIA認証の大豆を譲ってもらい、分析試料としました。
- 分析期間は1997年3月から4月となっています。
- GC法による有機リン系残留農薬一斉分析を実施しました。
結果
大豆
| 品名 | 産地など | 農薬名 | 検出量 |
|---|---|---|---|
| 大粒大豆 | アメリカ産(OCIA認証） | EPN | 0.026ppm |
納豆
| 製品名 | 銘柄・産地 | 生産・製造者 | 農薬名 | 検出量(ppm) |
|---|---|---|---|---|
| ひきわり納豆 | 有機栽培ミネソタリビングファーム | あづま食品 | フェニトロチオン | 0.009 |
| EPN | 0.005 | |||
| 小粒納豆 | 同上 | 同上 | フェニトロチオン | 0.01 |
| くめ小粒納豆 | 有機無農薬 | くめ・クリオ | フェニトロチオン | 0.01 |
| 極小粒有機栽培納豆 | 米国産有機栽培 | コープデリー | フェニトロチオン | 0.011 |
| 朝日印納豆 | 米国産有機無農薬 | 朝日食品 | フェニトロチオン | 0.006 |
| マラチオン | 0.005 | |||
| 極小粒納豆 | OCIA認定有機 | あずま食品 | フェニトロチオン | 0.011 |
豆腐
| 製品名 | 銘柄・産地 | 生産・製造者 | 農薬名 | 検出量(ppm) |
|---|---|---|---|---|
| 生粋よせこみ豆腐 | 有機栽培無農薬 | 小野久 | フェニトロチオン | 0.01 |
| EPN | 0.008 | |||
| 生粋豆乳 | 同上 | 同上 | フェニトロチオン | 0.011 |
| EPN | 0.01 |
醤油・味噌
| 製品名 | 銘柄・産地 | 生産・製造者 | 農薬名 | 検出量(ppm) |
|---|---|---|---|---|
| 丸大豆吟選しょうゆ | アメリカ有機農産物表示 | ヤマサ醤油 | フェニトロチオン | 0.009 |
| たまりしょうゆ | OCIA認定有機丸100% | アメリカ産 | マラチオン | 0.002 |
| 無農薬味噌 | 無農薬有機OGBA公認無農薬有機玄米 | 仙台味噌醤油株式会社 | クロルピリホスメチル | 0.007 |
| フェニトロチオン | 0.01 |
補足
- 有機認証表示があるにもかかわらず、残留農薬が検出されています。検出されているのは有機リン系の殺虫剤です。
- 大豆から検出されたEPNは残留基準値以下のため、食品衛生法上は問題はありませんが、本来、栽培時には農薬の使用を認めていないはずの有機認証農産物から農薬が検出される点は問題です。
- 加工食品には、基準値の設定はありませんが、本来、栽培時には農薬の使用を認めていないはずの有機認証農産物を原料とした製品からから農薬が検出される点は問題です。
- 検出される農薬が栽培時に使用されたものか、収穫後の使用であるポストハーベストかは不明です。この時期の有機認証はポストハーベスト処理を考慮していないものがありました。
- 1996年に報告されている事例で、アメリカミネソタ州司法長官が「有機表示はウソだった」として、通常の商品をOCIA認証の「オーガニック商品」と偽って販売を行っていた大豆・穀物卸売業者を詐欺罪で告発したものがあります。
- 有機認証団体のOCIAは、このスキャンダルへの関与を否定し、「認証制度を不正に利用しようと企めばごまかすことも可能なことが、この事件でわかった」と、述べたとされています（日本農業新聞1997年4月11日）。
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