アメリカ産有機認証レーズンの残留農薬調査2025

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2026.6.4公開

 

はじめに

 アメリカ農務省(USDA)が公表した食品の残留農薬調査(2020年)に、驚きの結果があることを指摘している消費者団体EWGのレポート(EWG:EWG's Shopper's Guide to Pesticides in Produce | Raisins)があります。5年以上前の話になりますが、このレポートによれば、アメリカ国内で流通しているレーズンを対象に実施された残留農薬検査の結果を解析すると、なんと検査した製品の99%以上から何らかの農薬が検出されるというのです。また、1製品から10種類以上もの農薬が検出される製品が、562検体(つまり全体の4分の3)もあったことも示されています。

 さらに、この調査は、慣行栽培の製品だけでなく有機栽培(オーガニック)のレーズンも対象になっています。合計で86検体が検査されているのですが、10種類以上の農薬が検出されたものが3検体、平均では約4種類の農薬が検出されるという実態があり、農薬が全く検出されなかったのは、わずか1検体だけだった、という結果になっています。

 もちろん、有機栽培の認証は、農薬の残留がないことを認証する制度ではありません。使用が認められている農薬もあります。また、対策がとられていることが前提とはいっても、近隣の農地から農薬が風に乗って飛んでくる「飛散(ドリフト)」なども起こり得るので、栽培時には、想定していなかった形で残留農薬が検出されることはありえます。

 とはいっても、このUSDA調査で検出された農薬は、いずれも有機栽培での使用は認められていない農薬であるうえに、ドリフトにしては検出率が高すぎる傾向が見られます。また、どういうわけか、共通して低濃度のビフェントリンとメトキシフェノジドが検出されるという、不思議な共通点が見られます。これは、なぜなのでしょうか。

 農民連食品分析センターでは、USDAが報告したアメリカ産レーズン市場の状況は本当なのか、またこれは日本で流通しているレーズン製品でも同様なのかを確認するため、2023年から、国内で販売されているアメリカ産有機レーズン21製品を購入し、残留農薬検査を行いました。

検査サンプルと検査法について

 2023年6月から2025年5月にかけて、オンラインショップを中心に、原産国がアメリカのもので、有機認証を取得しているレーズン21製品を購入、残留農薬一斉分析354成分検査を実施しました。検査対象とした農薬成分および検査法については、別途検査法のページをご参考下さい。

*補足:2023年に調査に取り組みましたが、検査装置のGC/MSが破損、稼働困難な状態になったため調査を休止、募金により新たにGC/MSを導入することができたため、2025年、改めて調査に取り組むことができました。募金へのご協力ありがとうございました。

分析結果について

 結果は以下の通りです。検査を行った有機認証を受けたレーズン製品全てから、農薬の検出が認められました。農薬の検出単位は、ppmです。

 なお、「痕跡()」となっているのものは、定量下限以下での検出が認められたことを示します。()内の数字は統計的信頼度が低く、あくまで参考値となります。

表1 アメリカ産有機栽培レーズンの残留農薬検査結果 2025年

No. 試料写真 試料名 販売者・製造者・
加工者など
分析結果(ppm)
2023年調査分
S01

有機カリフォルニアレーズン
賞:2023.08
LOT:23B07

アリサン(有)

ビフェントリン
メトキシフェノジド

痕跡(0.003)
0.031
S02

有機房干しトンプソンレーズン

賞:2025.11.18
LOT:53049

 

(株)ナチュラルキッチン

ビフェントリン
メトキシフェノジド
クロラントラニリプロール
ピラクロストロビン
トリフロキシストロビン
ボスカリド

痕跡(0.005)
0.084
0.034
0.031
痕跡(0.008)
0.083

S03

房干しトンプソンレーズン

(有)九南サービス

ビフェントリン
メトキシフェノジド
イミダクロプリド
シフルフェナミド

痕跡(0.004)
0.150
0.448
0.032
S04

オーガニックレーズン

LOT:3E17


桜井食品(株)

ビフェントリン
メトキシフェノジド

痕跡(0.006)
痕跡(0.005)
S05

有機レーズン

LOT:2025.09 AB3

クラウンフーヅ(株) ビフェントリン
メトキシフェノジド
痕跡(0.006)
痕跡(0.004)
S06
有機ドライフルーツ・レーズン

LOT:23.11.30-B
(株)ノヴァ ビフェントリン
メトキシフェノジド
スピロジクロフェン
痕跡(0.003)
0.010
痕跡(0.006)
S07
有機カリフォルニアレーズン
オーサワジャパン(株) ビフェントリン
メトキシフェノジド
イミダクロプリド
ピペロニルブトキシド
クレソキシムメチル
0.020
0.113
痕跡(0.006)
1.122
痕跡(0.007)
S08
有機栽培レーズン
(株)創健社 ビフェントリン
メトキシフェノジド
イミダクロプリド
ピペロニルブトキシド
クレソキシムメチル
0.017
0.106
痕跡(0.006)
0.063
0.015
S09
有機レーズン
(株)プレス・
オールターナティブ
第3世界ショップ
ビフェントリン
メトキシフェノジド
クロラントラニリプロール
0.019
0.012
痕跡(0.007)
2025年調査分
S10 有機カリフォルニアレーズン
Lot.2025.01 24G30
アリサン(有) ビフェントリン
メトキシフェノジド
クロラントラニリプロール
痕跡(0.001)
0.020
痕跡(0.005)
S11 有機房干しトンプソンレーズン

賞:25.10.20
(株)ナチュラルキッチン アゾキシストロビン
ジフェノコナゾール
ビフェントリン
メトキシフェノジド
0.147
痕跡(0.003)
痕跡(0.002)
0.097
S12 房干しトンプソンレーズン

賞:2025.04.12
(有)九南サービス アゾキシストロビン
イミダクロプリド
ジフェノコナゾール
ビフェントリン
メトキシフェノジド
0.112
0.007
痕跡(0.002)
痕跡(0.002)
0.061
S13 有機レーズン

賞:2025.05.04
クラウンフーヅ(株) ビフェントリン
メトキシフェノジド
痕跡(0.002)
痕跡(0.006)
S14 有機ドライフルーツ·レーズン

Lot.25.7.1-A
(株)ノヴァ イミダクロプリド
クレソキシムメチル
ビフェントリン
メトキシフェノジド
痕跡(0.005)
0.011
痕跡(0.006)
0.143
S15 有機カリフォルニアレーズン

賞:25.5.6
(株)万直商店 ビフェントリン
ピペロニルブトキシド
メトキシフェノジド
0.010
0.099
痕跡(0.009)
S16 有機栽培レーズン
賞:25.5.13
(株)万直商店 ビフェントリン
メトキシフェノジド
0.011
痕跡(0.008)
S17 有機トンプソンレーズン

賞:25.5.16
金鶴食品製菓(株)  ビフェントリン
メトキシフェノジド
痕跡(0.005)
痕跡(0.007)
S19 有機レーズン

賞:2025.04.06

(株)ビオ・マーケット
和歌山センター

ビフェントリン
ピペロニルブトキシド
メトキシフェノジド
痕跡(0.008)
痕跡(0.005)
痕跡(0.008)
S20 オーガニックレーズン

賞:2025.7.13
ロハスアースゲート
インターナショナル(株)
+MN
シプロジニル
ビフェントリン
メトキシフェノジド
痕跡(0.001)
痕跡(0.005)
痕跡(0.006)
S21 オーガニックカリフォルニアレーズン

賞:25.04.15
(株)みの屋A ビフェントリン
メトキシフェノジド
痕跡(0.004)
痕跡(0.004)
S22 有機レーズン 大

賞:25.03.19
東洋ナッツ食品(株) ビフェントリン
メトキシフェノジド
0.013
痕跡(0.008)

考察

  • 21製品、全ての製品から残留農薬の検出が認められました。
  • 残留基準値を超過していると判断できれる製品はなく、いずれも食品衛生法上は、問題のない製品と評価されるものでした。
  • 日本で流通しているアメリカ産の有機レーズンにもUSDAで行われた調査結果と同じ傾向があることが確認できました。有機レーズンから農薬が出るというのは、農薬の残留がないことを期待して選んでいる消費者にとっては、気がかりな結果といえるでしょう。
  • USDA調査でも検出率が高かった殺虫剤の「ビフェントリン」、「メトキシフェノジド」は、全ての検体から検出されました。これは、2023年に販売されていた製品でも、2025年に販売されていた製品でも共通でした。
  • ネオニコチノイド系殺虫剤のイミダクロプリドが検出されているものが5製品ありました。
  • 有機認証という仕組みの原則に立ち返ると、なぜ使用していないはずの農薬が検出されるのか?という疑問がでる結果となりました。有機栽培品に農薬が混入するルートとしては、
     1. 栽培中の事故やミス
     2. 栽培地で慣行栽培品に散布した農薬が風などで飛んできて付着してしまうドリフト
     3. レーズン乾燥中に土ぼこりなどを介して農薬が付着し洗浄しても取り除ききれなかった
     4. 加工所のラインが一部、慣行栽培のレーズンと共用されていてそこで混入が生じた
     5. そもそも有機栽培品ではない
     6. まだ知られていない加工時の使用
     7. 倉庫薫蒸の際に使用される農薬の付着
     8. ポストハーベスト(乾燥中に集まるハエ類からの防護)
    などが考えられます。
  • 加工の際、水道水や地下水などを使用しているとすると、その影響を受けるのではと考え、カリフォルニアなどの地下水、水道水中の農薬調査をおこなった研究を探してみましたが、ビフェントリン、メトキシフェノジドの検出を示すようなデータは見つけられず、関係性はわかりませんでした。
  • おそらく生産地も、生産者も、製造者も異なると考えられる有機レーズンから、なぜビフェントリン、メトキシフェノジドが共通して検出されるのかについては、今後の調査と情報収集が必要になります。なにかアメリカのレーズン生産では、公には知られていない加工手法などがあり、その過程で、この農薬は使用されているということなのかもしれません。
  • USDAやレーズンの生産者はこの原因をどう分析しているか、メールで問い合わせましたが、USDAの農薬調査チームは原因の分析までは行っていないとのことでした。カリフォルニアを拠点とする世界最大級のレーズン生産者組合のSUN-MAIDからは今のところ返答は得られていません。
  • 調査をおこなった製品のなかには、0.1ppmを超える濃度で検出されたものがいくつかありました。加工の過程で乾燥による濃縮が起きるとはいっても、有機栽培という背景のなかで生産されるレーズンとしては検出値が大きいという印象を受けます。これらの製品では、不適切な生産や流通がどこかで行われていた可能性も推測されました。
  • なお、この調査は、アメリカ産有機レーズンの流通関係者の責任などを追及する目的でおこなったものではありません。アメリカ産有機レーズンで、農薬が広く検出される理由がわかっていない現状で、少なくとも、有機農産物は残留農薬の影響を受けていないものであって欲しいという生産者や消費者の期待に応える製品が生産されていくには、検出理由が解析され、改善が取り組まれることこそが望ましいと考えます。有機認証農産物を販売するメーカーさんの多くは、リクエストに応えるために、努力を重ねて製品の企画化や製造に取り組んでいると聞いています。課題の解決に、生産者、メーカー、消費者の連帯、連携が進むことに期待を寄せたいところです。
  • 今回はアメリカ産有機レーズンに焦点を当てましたが、1点参考として実施したトルコ産製品(表2のNo.S18)からは、ネオニコチノイド系農薬の「アセタミプリド」、有機リン系殺虫剤の「クロルピリホスメチル」が検出されました。アメリカ産のレーズンで検出が目立ったビフェントリンとメトキシフェノジドは検出されませんでした。1 検体のみでは、判断が難しいですが、この結果は、アメリカ産レーズンとは違った検出傾向を示している可能性があります。この違いの理由を追跡することができれば、アメリカでのレーズン生産現場には、ビフェントリンとメトキシフェノジドが検出される理由に繋がる処理や環境などの背景に迫れる可能性があります。今後はトルコ、チリなど他国のオーガニックレーズンとの比較や、オーガニック表記のないレーズンとの比較調査を計画をして実態調査にあたりたいと考えています。今後の調査資金のご支援などをよろしくお願いいたします(オンライン募金)。

    表2 [参考試料]トルコ産有機レーズンの残留農薬分析結果
    No. 写真 商品名 販売者・製造者・加工者など 分析結果(ppm)
    S18

    トルコ産

    有機トンプソンレーズン
    賞:2025.06.21 LOT20240909

    戸倉商事(株)

    アセタミプリド

    クロルピリホスメチル

    痕跡
    (0.002)

    痕跡
    (0.001)


参考資料-アメリカ農務省USDA(PDP)の農薬調査データベースから-

  • 参考資料の表1にまとめたように、USDA調査では、有機栽培品(全86検体)の98.8%から1つ以上の農薬が検出されています。表外ですが、1試料から検出された農薬の数は、有機栽培品でも平均4種類(最大は12)、非有機栽培品では平均12種類(最大は26)でした。検出率も検出数もこれだけを見ると驚きの結果と言えます。
  • 参考資料:表1 非有機栽培で検出率50%以上の農薬成分
    農薬成分名 非有機栽培品
    670検体中の
    検出数/率
    有機栽培品
    86検体中の
    検出数/率
    米国の残留
    基準値
    (ppm)
    慣行栽培品
    最大検出値
    (ppm)
    有機栽培品
    最大検出値
    (ppm)
    基準値の1/10を上回ったものの比率 定量下限値以下の割合
    イミダクロプリド 619 / 92.4% 15 / 17.4% 1.5 0.230 0.017 4 / 634 33 / 634
    メトキシフェノジド 599 / 89.4% 60 / 69.8% 1.5 0.620 0.330 69 / 659 21 / 659
    ボスカリド 591 / 88.2% 31 / 36.0% 8.5 1.000 0.039 3 / 622 101 / 622
    キノキシフェン 555 / 82.8% 7 / 8.1% 2.0 0.095 0.008 0 / 562 216 / 562
    スピロテトラマト 524 / 78.2% 10 / 11.6% 3.0 0.130 0.020 0 / 534 135 / 534
    ビフェントリン 514 / 76.7% 65 / 75.6% 0.3 0.027 0.005 0 / 579 479 / 579
    ピラクロストロビン 488 / 72.8% 6 / 7.0% 7.0 0.700 0.013 1 / 494 49 / 494
    ミクロブタニル 481 / 71.8% 3 / 3.5% 10.0 0.091 0.022 0 / 484 101 / 484
    テブコナゾール 454 / 67.8% 13 / 15.1% 6.0 0.350 0.100 0 / 467 88 / 467
    トリフロキシストロビン 449 / 67.0% 10 / 11.6% 5.0 0.096 0.027 0 / 459 120 / 459
    フルオピラム 358 / 53.4% 22 / 25.6% 3.0 0.300 0.018 1 / 380 98 / 380
    テトラコナゾール 348 / 51.9% 7 / 8.1% 0.2 0.210 0.021 55 / 355 78 / 355
    フルトリアホール 343 / 51.2% 31 / 36.0% 2.4 0.570 0.052 5 / 374 98 / 374

    (USDA調査を基に作成)

  • 一方で、検出された”値”に着目すると、印象が変わってきます。検出率が50%を超えた農薬をまとめた参考資料の表1を見てください。たとえば、有機栽培品で最も検出率が高かったビフェントリンの検出最大値は0.005ppmでした。ぶどうをレーズンに加工する際、乾燥工程で水分が除かれるため、農薬の濃度は5倍程度まで濃縮されます。一方で米国におけるビフェントリンの基準値は0.3ppmですので、検出された最大値でも基準値の1/50以下であり、加工前の生の状態ならさらにマージンがあると考えられます。ビフェントリン同様に有機栽培品で検出率が高かったメトキシフェノジドの最大値は0.33ppmで、基準値1.5ppmの約1/5でした。また、検出率が50%を超えた農薬でも、基準値の1/10を超えて検出された試料はかなり少なく、多いものでもテトラコナゾールの15.5%(55/355検体)、メトキシフェノジドの10.5%(69/659検体)くらいで、それ以外は1%にも満たない検出状況でした。つまり、非有機栽培品でも、残留農薬の濃度は基準値に対してかなり低いレベルに抑えられていると言えます。
  • また、参考資料の表1の検出農薬のうち、測定機の検出限界に近い、定量下限値以下で報告されている割合は全体のおよそ1/4、ビフェントリンではおよそ8割が定量下限値以下でした。つまり、USDA調査の検出”率”の高さは、測定できるギリギリの低濃度まで残留農薬検査をしっかり行った結果であるということがわかりました。定量下限値以下は「不検出」・「定量下限値以下」・「痕跡」のように、数値を報告しないというやり方もあるのですが、USDA調査は、消費者全体がどの程度農薬に曝露しているかを調査する目的があるので、定量下限値以下を「不検出(≒0)」とカウントすることで消費者の農薬曝露量を過小に見積らないよう、あえて「数値」として報告されているのだと思われます。その結果、検出”率”に注目すると、レーズンは有機であっても、「農薬に汚染されている」という印象が強くなるかもしれません。
  • 参考資料 表2 農薬の検出比率(栽培方法別)
    農薬の検出比率 全体 非有機
    栽培品
    有機
    栽培品
    1成分以上検出あり 751 666 85
    検出なし 5 4 1
    合計 756 670 86
    1成分以上検出率 99.3% 99.4% 98.8%

    (USDA調査を基に作成)

  •  1種類以上の農薬が検出されるかどうかという、「0か1かの検出”率”」だけを見ると、非有機栽培品・有機栽培品のどちらも同程度に高いように見えますが、試料ごとの農薬検出成分数、検出成分ごとの検出率とも有機は非有機と比較してだいぶ小さくなっていることがわかります(参考資料の表1,表2)。農薬曝露の総量をより少なくしたいのであれば、やはり有機栽培品を選ぶ事をおすすめします。

農民連食品分析センターについて

 農民連食品分析センターは、1996年に多くの農業者や消費者の募金により設立された背景を持つ世界的にも珍しい分析施設です。募金による設立のため、企業や行政などの影響を受けることなく、独立した立場で活動を行っています。

 1996年の設立以来、私たちの調査活動は、募金で運営されています。正直なところ、私たちの活動に必要な財政は厳しいところにあります。消費者や農民の立場に立った活動を続けていくためにも、みなさんからの支援が欠かせません。

 分析センターを支援していただく会員「分析センターサポーター会員」の募集をしています。年会費一口5,000円以上で、サポーター会員になることが出来ます。私たちの活動を支えてください。よろしくお願い致します。

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