
アメリカ農務省(USDA)が公表した食品の残留農薬調査(2020年)に、驚きの結果があることを指摘している消費者団体EWGのレポート(EWG:EWG's Shopper's Guide to Pesticides in Produce | Raisins)があります。5年以上前の話になりますが、このレポートによれば、アメリカ国内で流通しているレーズンを対象に実施された残留農薬検査の結果を解析すると、なんと検査した製品の99%以上から何らかの農薬が検出されるというのです。また、1製品から10種類以上もの農薬が検出される製品が、562検体(つまり全体の4分の3)もあったことも示されています。
さらに、この調査は、慣行栽培の製品だけでなく有機栽培(オーガニック)のレーズンも対象になっています。合計で86検体が検査されているのですが、10種類以上の農薬が検出されたものが3検体、平均では約4種類の農薬が検出されるという実態があり、農薬が全く検出されなかったのは、わずか1検体だけだった、という結果になっています。
もちろん、有機栽培の認証は、農薬の残留がないことを認証する制度ではありません。使用が認められている農薬もあります。また、対策がとられていることが前提とはいっても、近隣の農地から農薬が風に乗って飛んでくる「飛散(ドリフト)」なども起こり得るので、栽培時には、想定していなかった形で残留農薬が検出されることはありえます。
とはいっても、このUSDA調査で検出された農薬は、いずれも有機栽培での使用は認められていない農薬であるうえに、ドリフトにしては検出率が高すぎる傾向が見られます。また、どういうわけか、共通して低濃度のビフェントリンとメトキシフェノジドが検出されるという、不思議な共通点が見られます。これは、なぜなのでしょうか。
農民連食品分析センターでは、USDAが報告したアメリカ産レーズン市場の状況は本当なのか、またこれは日本で流通しているレーズン製品でも同様なのかを確認するため、2023年から、国内で販売されているアメリカ産有機レーズン21製品を購入し、残留農薬検査を行いました。
2023年6月から2025年5月にかけて、オンラインショップを中心に、原産国がアメリカのもので、有機認証を取得しているレーズン21製品を購入、残留農薬一斉分析354成分検査を実施しました。検査対象とした農薬成分および検査法については、別途検査法のページをご参考下さい。
*補足:2023年に調査に取り組みましたが、検査装置のGC/MSが破損、稼働困難な状態になったため調査を休止、募金により新たにGC/MSを導入することができたため、2025年、改めて調査に取り組むことができました。募金へのご協力ありがとうございました。
結果は以下の通りです。検査を行った有機認証を受けたレーズン製品全てから、農薬の検出が認められました。農薬の検出単位は、ppmです。
なお、「痕跡()」となっているのものは、定量下限以下での検出が認められたことを示します。()内の数字は統計的信頼度が低く、あくまで参考値となります。
表1 アメリカ産有機栽培レーズンの残留農薬検査結果 2025年
| No. | 写真 | 商品名 | 販売者・製造者・加工者など | 分析結果(ppm) | |
|---|---|---|---|---|---|
| S18 |
|
トルコ産
有機トンプソンレーズン |
戸倉商事(株) |
アセタミプリド クロルピリホスメチル |
痕跡 痕跡 |
| 農薬成分名 | 非有機栽培品 670検体中の 検出数/率 |
有機栽培品 86検体中の 検出数/率 |
米国の残留 基準値 (ppm) |
慣行栽培品 最大検出値 (ppm) |
有機栽培品 最大検出値 (ppm) |
基準値の1/10を上回ったものの比率 | 定量下限値以下の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| イミダクロプリド | 619 / 92.4% | 15 / 17.4% | 1.5 | 0.230 | 0.017 | 4 / 634 | 33 / 634 |
| メトキシフェノジド | 599 / 89.4% | 60 / 69.8% | 1.5 | 0.620 | 0.330 | 69 / 659 | 21 / 659 |
| ボスカリド | 591 / 88.2% | 31 / 36.0% | 8.5 | 1.000 | 0.039 | 3 / 622 | 101 / 622 |
| キノキシフェン | 555 / 82.8% | 7 / 8.1% | 2.0 | 0.095 | 0.008 | 0 / 562 | 216 / 562 |
| スピロテトラマト | 524 / 78.2% | 10 / 11.6% | 3.0 | 0.130 | 0.020 | 0 / 534 | 135 / 534 |
| ビフェントリン | 514 / 76.7% | 65 / 75.6% | 0.3 | 0.027 | 0.005 | 0 / 579 | 479 / 579 |
| ピラクロストロビン | 488 / 72.8% | 6 / 7.0% | 7.0 | 0.700 | 0.013 | 1 / 494 | 49 / 494 |
| ミクロブタニル | 481 / 71.8% | 3 / 3.5% | 10.0 | 0.091 | 0.022 | 0 / 484 | 101 / 484 |
| テブコナゾール | 454 / 67.8% | 13 / 15.1% | 6.0 | 0.350 | 0.100 | 0 / 467 | 88 / 467 |
| トリフロキシストロビン | 449 / 67.0% | 10 / 11.6% | 5.0 | 0.096 | 0.027 | 0 / 459 | 120 / 459 |
| フルオピラム | 358 / 53.4% | 22 / 25.6% | 3.0 | 0.300 | 0.018 | 1 / 380 | 98 / 380 |
| テトラコナゾール | 348 / 51.9% | 7 / 8.1% | 0.2 | 0.210 | 0.021 | 55 / 355 | 78 / 355 |
| フルトリアホール | 343 / 51.2% | 31 / 36.0% | 2.4 | 0.570 | 0.052 | 5 / 374 | 98 / 374 |
(USDA調査を基に作成)
| 農薬の検出比率 | 全体 | 非有機 栽培品 |
有機 栽培品 |
|---|---|---|---|
| 1成分以上検出あり | 751 | 666 | 85 |
| 検出なし | 5 | 4 | 1 |
| 合計 | 756 | 670 | 86 |
| 1成分以上検出率 | 99.3% | 99.4% | 98.8% |
(USDA調査を基に作成)
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