はじめに
先の調査の結果、中国産冷凍野菜から相次ぐ残留農薬違反品が見つかったことを受け、同様の原材料を大量に使用していると考えられる飲食業関連で提供される食品について残留農薬検査をおこなったものです。
- 分析は2002年3月。
- 本分析結果は分析依頼試料についてのみ有効で、農民連食品分析センターが販売、流通される作物（商品）全体の残留農薬について保証するものではありません。
- 東京都内のファミリーレストラン・コンビニ・スーパーなどで、持ち帰りメニューとして提供されている商品について検査を実施しました。
結果
以下に示すように、検査検体数6件うち4件より、残留農薬が検出されました。
- No28で合成ピレスロイド系殺虫剤フェンバレレートの1.41倍にあたる違反品（生鮮枝豆として見た場合。フェンバレレートの残留基準値は1.0ppm）があった。
- No28以外では、残留農薬基準違反にあたる試料はなかった。（なお、冷凍枝豆およびすでに調理済みの品には食品衛生法に残留農薬基準の設定はありません）
- 合成ピレスロイド系殺虫剤および有機リン系殺虫剤の検出頻度が高い。
- 一つの試料から2〜5種類といった複数の農薬が検出される傾向がある。
- 調理済みであっても農薬が残留している場合がある。
- 「痕跡」は食品衛生法の定める検出限界以下での検出を示し、「検出せず」と同義で、（）内の数値は参考値となります。
- 分析サンプルに産地名を追加しました。産地は農民運動全国連合会が後日、各製造者、販売者より確認をとったものとなっています。（02.7.28補足）
| No． | 品 名 | 販売店 | 分析結果(ppm) |
|---|---|---|---|
1 |
|||
2 |
ホウレンソウのソテー |
すかいらーく朝霞城山店 （株式会社すかいらーく） |
クロルピリホス 痕跡
シペルメトリン 0.03 ダイアジノン 痕跡 |
3 |
ホウレンソウのソテー |
Denny's和光店 （株式会社デニーズジャパン） |
シペルメトリン 0.07
マラチオン 痕跡 p,p'DDE 0.016 |
4 |
ホウレンソウごま和え |
オリジン弁当成増店 （オリジン東秀株式会社） |
検出せず |
5 |
ホウレンソウとしめじソテー |
CASA光が丘店 （株式会社西洋フードシステムズ） |
エンドリン 0.1
シペルメトリン 0.02 |
6 |
ホウレンソウのソテー |
Sunday's Sun前野町店 (株式会社サンデーサン) |
検出せず |
7 |
ホウレンソウのソテー |
ジョナサン成増駅前店 （株式会社ジョナサン） |
クロルピリホス 0.06
シペルメトリン 0.08 |
8 |
ホウレンソウのソテー |
BLDY成増店 （株式会社ビルディ） |
シペルメトリン 0.02 |
8 |
６品目の ほうれん草ごま和え |
購入店：サンクス成増北口店 販売店：チェリーフレッシュフーズ(株) （東京都中央区日本橋茅場町2-4-4） |
クロルピリホス 0.02
シペルメトリン 0.03 |
10 |
ホウレンソウのソテー |
すかいらーく板橋仲宿店 （株式会社すかいらーく） |
検出せず |
11 |
ホウレンソウのソテー |
ジョナサン妻恋坂店 （株式会社ジョナサン） |
検出せず |
12 |
ホウレンソウのソテー |
Royal Host戸田店 (株式会社オージーロイヤル) |
シペルメトリン 0.21
プロチオホス 0.87 |
補足
- 私たちは、市販される中国産冷凍ほうれん草製品から残留農薬が基準値相当を上回って検出されることを確認し、厚生労働省に数回にわたって、データ提供を行っていましたが、厚生労働省では食品衛生法の解釈上、こうした製品に規制を行わずにいました）冷凍ほうれん草などの食品は加工食品に分類されるため、当時の食品衛生法では、当てはめる基準値がない）。
- 一刻も早い流通の制限を行うべきと考えていたわたしたちは、厚生労働省のそうした対応と遅さに納得ができなかったため、食品に対するイメージを重視し、また取扱量も多いファミリーレストランに対象を定めました。ファミリーレストランを運営する会社に、この情報が伝われば、無管理のまま流通されているこれら製品に対して、何らかの動きが作れるのではないかと考えたからです。
- 厚生労働省の記者会見室で、私たちは、この内容をメディアに発表しました。その日のうちに、いずれのファミリーレストランでもメニューからほうれん草を利用したものが消えたと言われています。
- このデータが決めてとなり、記者会見の翌日には、厚生労働省（この年に入ってから調査を始め、問題のある製品が流通していることを自身でも確認しはじめていた）もようやく重い腰を上げ、私たちの検査データをもとに都内の保健所へ検査命令を出しました。
- その後、私たちが把握していたデータよりも、より基準値を超過した製品が冷凍保管庫から次々と発見され、業界へ大きな衝撃と影響を与えました。厚生労働省のデータには、参考値ではありますが、最大で基準値の256倍違反が報告されたことがありました。同年5月には冷凍ほうれん草の輸入届出トン数が0トンになります。
- 私たちの活動をきっかけに、冷凍野菜だけでなく、中国産野菜の残留農薬検査が進み、その危険な実態が明らかにされていきました。やがて、輸入食品の残留農薬の問題へと話題は広がり、今では一般的によく使われる「食の安全安心」というキーワードが生まれるようになりました。
- また、私たちの指摘がきっかけになり、加工食品なら抜け道になる、基準値の存在しない農薬があるなど、食品衛生法の穴の問題に対して、大きな改正が行われるようになりました。従来までのネガティブリスト制度から、180度の方向転換にあたる、ポジティブリスト制度への変わっていくことになりました。
- この改正により、残留基準値の定められていない成分が検出された時点でアウトに。加工食品も残留基準値が設定されました。残留基準値の設定されていない成分は、一律基準（0.01ppm）という暫定基準が適用されるようになりました。
- 食品衛生法は、基本的には食糧供給の根幹は、国内での生産に基づくものとして組み上げられてきたものといえます。現在のような、封を切ったらそのまますぐ食べられるようなレベルの食品がこれほど大量に輸入され、消費されるところを想定できてはいなかったといえます。私たちの食糧共有に対する考え方や経済性ばかり重視する流通の仕組みについても、学ぶ必要がある事件であったと私たちは考えています。
より詳しく情報を知りたいときは
まず以下までお電話をください。
農民連食品分析センター
TEL：03-5926-5131
FAX：03-3959-5660
Email power8@nouminren.ne.jp