第4話

猛暑は続くが、出穂は近いゾ

 

 
 遠くでしたたるようなアブラゼミの声。夏草の向こうではビニールハウスが銀色に音も、熱も反射しているかのよう。傍らの農道を歩くボクらの影は、暑さに輪郭がゆがめられたかのように無言でくっついてくる。

 風にそよぐ一面の田んぼは実に整然として、この暑さをすい込んでしまいそうなほど美しい。

 ひときわ目を引くのがボクらの田んぼは言うまでもなく、虎刈り頭みたいにへこんだり、飛び出したりと実ににぎやか。

雑草だらけ。稲も元気に成長し、草を取ろうとすると体がすっぽり埋もれてしまう。

    前夜祭での飲み過ぎがたたって

 八月二日、第3回の除草作業。大きくなった稲に見えかくれしながら、不気味なほど無言での草取りに。暑いさなかの作業は実につらい。ボクは前夜祭で飲み過ぎたことも手伝って、草取りどころか足どりさえもままならない。
食欲の女神(?)満面の笑み。

よ!この鈴なりの枝豆を。

 昨晩は前夜祭と銘打って枝豆をしこたま堪能した。この枝豆は春に畦へ蒔いたもので、鞘がはじけそうなほどぷっくり太り、きゅっとウエストの締まったグラマーな出来映え。つややかな豆は甘く、うまみがありあとを引く。あわせて飲むビールのうまいこと進むこと。これぞ作ったものだけが味わえる最高の味なんだとみんな実感。前夜祭はいやでも盛り上がる。これが失敗。後の祭り。



    畦に蒔いた枝豆は最高にうまかった


 さて、肝心の稲はというと、ボク短い股下よりはるかに大きく、茎数は十本ほどに。幼穂が詰まってふんわりと柔らか。三、四日で一斉に出穂しそうな様子。中にはせっかちなのもいて、田んぼはほんのりと稲の花の香りが漂う具合。
 どうにかボクら自慢の「にぎやかで個性的な田んぼ」も厳しい愛情に答えてか、実りの季節に着実に向かっているよう。
 次回は「稲の花見会」を計画中。


(八田)
新聞「農民」1998/8/24

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