Jun 13, 2013

オレゴン州で見つかったラウンドアップ耐性遺伝子組換え小麦(MON81700)について

ポスト @ 11:30:54 | お知らせ

PVTXGX10

 2013年5月29日、USDAがオレゴン州での未認可遺伝子組換え小麦(現在のところMON71800ではないかとされているもの)が自生していたと報告した件について、検査などに必要な情報を集めてみましたので、以下にまとめておきます。必要に応じて内容は更新、修正をしていきます。

概要

  • モンサント社登録名はMON71800(Roundup Ready wheat)。
  • 春小麦品種Bobwhite(MON71900としてデザインされたもの)を親として使用。
  • 食品と飼料用に開発。現在は、一般圃場試験は不可。
  • モンサント社は2002年6月28日にFDAに任意の申請を開始、2003年4月25日に実質的同等性についての追加情報を提出。
  • 2004年6月9日、FDAはMON71800について、一般に流通される小麦と実質的同等であると確認し、食品および飼料で認可可能とし、審議を完了とした。(http://cera-gmc.org/docs/decdocs/04-300-008.pdf)。2004年にコロンビア州でも食品で認可の記述がある。
  • モンサント社は1998年から2004年まで研究開発。16州で試験栽培を実施していたが、世界的な反対運動を受け、2005年に野外栽培試験を終了。商用化されることなく姿を消した。以降、APHISは、遺伝子組換え小麦品種について、生産と商用化に関する規制は解除していない。

配列関係

  • 発現形質の中心配列はモンサント社定番のCP4-EPSPS型。
  • 配列導入はアグロバクテリウム法による。
  • 導入ベクターはPV-TXGT10。マップは上図。(=P-e35S=CTP2=CP4EPSPS=NOS3'=P-ract1=IrAct1=CTP2=CP4EPSPS=NOS'3=)
  • 発現形質のコアとなるCP4EPSPSが2カセット分、導入されている。テンサイなどと同じタイプ。
  • CP4EPSPSの塩基配列については、GenBank: AB209952を参照するとよい。
  • 一つ目のCP4EPSPSを発現させるプロモーターはenhanced CaMV 35S(GenBank: AJ308514.1)
  • ターミネータはNOS3'。
  • 二つ目のCP4EPSPSを発現させるプロモーターはP-ract1(Oryza sativa由来アクチンのプロモーター配列/GenBank: X63830)
  • その他についても触れておくと、CTP2(マップではArabTP)とはいわゆるCTP2、I-rAct1 Oryza sativa由来アクチンのイントロン配列。hsp70はheat shock protain配列

日本での状況

 平成13年5月8日の農林水産省プレスリリースに「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」に基づく申請にMON71800の記述あり。
 利用区分は模擬的環境利用で、計画名「除草剤グリホサートの影響を受けない組換えコムギMON71800系統の安全性評価」。
 利用目的は日本における栽培となっており、北海道農業研究センター隔離圃場、日本モンサント河内研究農場組換え植物隔離圃場での試験申請となっている。
 この申請により指針適合が確認されているが、実際に試験が行われたかどうかは不明。
 計画の申請者は(独)農業技術研究機構北海道農業研究センター、日本モンサント株式会社、農林水産先端技術産業振興センターとなっていた。実施予定期間は平成13年5月〜平成14年3月までのおよそ12ヶ月。

自生発覚以後の動き

 2013年5月29日、USDAがオレゴン州での未認可遺伝子組換え小麦(現在のところMON71800ではないかとされているもの)が自生していたと報告。6月3日、日本政府はアメリカ産小麦銘柄「ウェスタン・ホワイト」の輸入を停止した。ウェスタン・ホワイトは菓子向け小麦品種(ソフト・ホワイト小麦とホワイト・クラブ小麦を混合して作成)。

 開発元のモンサント社は、オレゴン州とワシントン州で販売されている小麦について自社調査。未認可小麦の検出はなかったと発表。意図的に種子が持ち出されたことによる今回に限られた事案か、場合によっては同社への妨害工作の可能性もあるとコメント。

 オレゴン州産小麦の90%は輸出向け。日本の小麦自給率は10%程度。年間需要約500万トンのうち約300万トンほどをアメリカから購入。この1/4に相当する80万トンほどがウェスタン・ホワイト。未認可小麦の自生は、この農場だけで起きたことなのか、それとも、より大きなコンタミネーションへと広がっていくのか、今後の展開に注意が必要。

試験法について(現時点での予測作業程度、ポジコンが入手できないので)

  • CP4EPSPS部位は、他の同系統品種とほぼおなじものが入っていると考えられる。PCR試験は、通常通り、検出用としてCP4EPSPSかNOSを増幅するプライマーと、確認用として各部位をオーバーラップするプライマーを作成すれば良いと予測。ただし、この品種の場合、CP4EPSPSカセットが2つあるので、プロモーターのちがいを利用した増幅部位とバンドサイズの工夫がいるだろう。
  • この辺のメカニズムを知っていると、おそらく遺伝子組み換え小麦の混入を隠すため、意図的に同系統の除草剤耐性配列を持つ遺伝子組換え大豆や菜種、とうもろこしなどを混入する可能性はあることから、他品種と見分けのつく特異的な塩基配列部位を確認することと、それに必要なプライマーを考えないと、最終的判断が難しいことになる。
  • 実際に反応系を確認できるポジティブコントロールの入手は期待できないという課題をどう解決するか、陽性プラスミド作成をする方向に進むのか。

参考になるリンク


ベクターマップは以下の論文を参照し、作成した。 H. Zhou *, J. D. Berg, S. E. Blank, C. A. Chay, G. Chen, S. R. Eskelsen, J. E. Fry, S. Hoi, T. Hu, P. J. Isakson, M. B. Lawton, S. G. Metz, C. B. Rempel, D. K. Ryerson, A. P. Sansone, A. L. Shook, R. J. Starke, J. M. Tichota and S. A. Valenti(2002) Field Efficacy Assessment of Transgenic Roundup Ready Wheat. Crop Science Vol. 43 No.3; p. 1072-1075 (https://www.crops.org/publications/cs/abstracts/43/3/1072?access=0&view=article)

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